毎月更新全5回
特別対談 アクティブな英語教育を目指して 安河内哲也×松本茂
「やればできる!」でおなじみの安河内哲也先生と,NHKテレビ「おとなの基礎英語」でおなじみの,ONE WORLD代表著者,松本茂先生との特別対談です。英語教育の改革を目指す同志として互いを認め合うお二方から,どんな熱いお話が聞けるのか,全5回のWEB連載スタートです。
CONTENTS
「カリスマ予備校講師」が文部科学省へ!?(2016.11.30更新)
教科書を反復して英語のコアを育てる(2016.12.22更新)
授業をコミュニケーションの場とする(2017.1.27更新)
知識伝達型の授業では,成績は伸びない!?(2017.2.24更新)
難関大学を志望する生徒ですら英語が話せない!?(2017.3.24更新)
ONE WORLD English Course 1-3

教育出版 中学英語教科書

ONE WORLD English Course

Part1
対談写真 安河内先生 松本先生

「カリスマ予備校講師」が文部科学省へ!?

松本  安河内先生とは,文部科学省(以下,文科省)でのさまざまな会議でご一緒して,目指している方向性が非常に近い同志であると勝手に思い込んでおります。先生は「カリスマ予備校講師」として知られる一方で,文科省の会議に出られたり,麹町学園女子中学高等学校(以下,麹町学園)の英語科特別顧問を務めたりされていますね。予備校ではなく,学校教育の改革のお手伝いをすることになったきっかけは,どのようなことだったのでしょうか。

 

安河内 すべてのきっかけが本当に偶然でした。そもそも私は20年間,大学受験の準備のための予備校で教えてきたので,バリッバリの受験英語を,知識伝達型の授業で教える,松本先生の対極にあるような,悪い英語教師の見本のような講師だったんですよ。

松本  いやいや,悪い見本なんてことはないでしょう。

 

安河内 とはいえ,受験英語を教えながら,「これはやっぱり違うだろう」とわかるわけですよ。たとえば,「クジラの公式」がなぜこのような構文であるかを1時間かけてレクチャーすることに意味があるのかと,授業をやりながら悩んでいたわけですね。しかし,やはり大学受験が変わらなければ,こういう受験英語はなくならない。そんな矛盾のなかで働いていた思いを書き綴ったものを,影響力のある方にお渡ししていたら,それがどなたかの目にとまったのか,声がかかって,文科省の会議の委員として入試改革の提言に関わることになりました。

(※2014年2月~9月「英語教育の在り方に関する有識者会議」)

 

麹町学園の英語教育改革でONE WORLDを採用

松本  なるほど。では,麹町学園の英語教育に関わるきっかけはどのようなことだったのでしょう。

 

安河内 これまでの中学校・高校の授業は,受験英語の影響を相当に受けてきていますよね。そうすると,大学入試を改革すると同時に,学校のなかも,より学習指導要領に準拠した4技能型の授業をするように変えていかなければならない。そのような学校教育の改革に対して,何かできることはないかなと思っていたときに,私と同じ大学の卒業生で,麹町学園で働いている人から,「この学校の英語教育をぜひ改革していきたいので,一緒にやりませんか」と言っていただき,顧問を引き受けることになったんです。

 

松本  麹町学園では,まず,それまで使っていた教科書をやめて,ONE WORLDを採用していただいたわけですね。それまでの教科書はどのようなタイプのものだったのですか。

松本先生

安河内 私学では,「文科省検定外」の難しい教科書を採用しているケースが多いですよね。麹町学園も例外ではなく,難しい検定外教科書を使っていました。決して悪い教科書ではありませんでしたが,必ずしも私たちの生徒のレベルには合っていませんでした。難しい教科書で難しいことばかりやっていると,英語そのものが嫌いになってしまう。では何を使えばいいのかと考えたときに,やはり学習指導要領に準拠していて,日本の中学生の平均値にあわせてつくられている検定教科書だろうということになったのです。検定教科書にも百花繚乱があるなかで,なぜONE WORLDになったかというと,松本先生がつくられているから,これに賭けて学校教育をやれば大丈夫だろう,と。

安河内先生 松本先生

松本  いやいや(笑)。…それはともかく,お話のなかで,生徒のレベルに合っていない教科書という問題が指摘されました。これは中学だけではなく,高校でもありがちな話ですね。見栄を張って難しい教科書を使ったり,「あの高校でこれを使っているんだからうちでも使おう」となったり。あるいは,「自分が高校生のときにこれを必死に勉強したんだから同じ教科書を」というような発想で採用が決まることもあるようですね。

 

難しすぎる教科書では生徒の成績は上がらない

安河内 私は20年間,予備校講師として生徒の成績を上げることだけを職業にしてきたのですが,生徒の成績を上げるために重要なポイントが2つあります。ひとつは,いきなり難しいことをやらせず,まずはレベルに合ったことから始めて,スモールステップで実力をつけていくということです。もうひとつは,「たくさんやらない」ということですね。たくさん問題を解かせれば英語ができるようになるとは限らないので,そこは成績を上げるためにも予備校では気をつけています。

 

松本  予備校で,たくさん問題を解かせるばかりにしないようにしているというのは,意外ですね。

 

安河内 ところが,多くの学校では逆をやっています。「難しいものをやらせれば生徒のレベルが上がるんじゃないか」,「文法の参考書を覚えさせれば合格実績が上がるんじゃないか」という期待のもとに,学校同士で参考書の分厚さの競争をやっていますが,多くの場合,それが成績が上がらない原因になっています。「多すぎる宿題」「分厚すぎる副教材」「難しすぎる教科書」の3つですね。

 

松本  難しすぎる教材を使うと,結局日本語で授業せざるを得なくなって,英語を読む量が極端に減ってしまいますよね。

 

安河内 そうですね。教えてあげないと生徒が自主的・自律的に理解することができないような内容を扱っていますから,知識伝達型の授業になってしまいます。つまり,先生がずっと黒板にS, V, O, Cなどと書きながら説明して,生徒はそれをノートに写す。とりあえず英文の構造と意味がわかる,という授業です。当然ほとんど日本語で進行して,結局,「生徒の口が動かない」授業です。難しい教材を使っていたときには,おそらく私たちの学校もそうなっていたと思います。

    先日,松本先生にも今の麹町学園の授業を見学していただいたそうですが,ご覧いただいた通り,今,私たちの学校の英語の授業は,先生は司会者役で主役は生徒。とにかく「生徒の口が動く」授業になっています。教材を検定教科書一本に絞ったおかげで,生徒たちに余裕が生まれました。そして,「わかるから楽しい」「もっとできるようになりたい」という好循環が始まったと思います。

(編注:『ONE WORLD Info』2016年秋号「編集部の授業レポート」参照)

麹町学園の授業の様子

(麹町学園の授業の様子)

Part2 つづきます!

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