教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.1 (小学校版)
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図3 児童作例(はがき) また,指導計画として,意図的に書写の硬筆の授業が同時期になるように設定しました。相手に効果的に伝えるために「文字の太さ」や「ていねいさ」に注目させたかったからです。伝えたい思いが高まっている児童にとって,書写での学びが効果的に伝える手段としてつながり,目を輝かせながら熱心に学ぶことができました。そこで,ポスターを書き始める前に,「文字の大きさ」「ていねいさ」「文字の太さ」について視点を与え,児童とルーブリック表を作りました(表1)。その表をもとに,ポスター制作にも取り組み,完成したポスターは,最寄り駅や中学校,コンビニエンスストアに掲示することができました(図2)。掲示した中学校やコンビニエンスストアにアンケートをとると,「バランスがよく,読みやすい。」「丁寧で伝わりやすい。」という評価をいただきました。 これらの学びは,児童から自然発生的に生まれてきたものではありません。ましてや教師が指示し,レールを敷いた学習でもありません。事前に児童の振り返りから予測し,既習事項や年間計画から関連した事項を同時期に学習できるように計画したものです。地域のかたへ伝える活動については児童からの案だったので,即座に連絡をして許可をとり,綿密な打ち合わせをしました。 計画的な授業づくりは時として,こちらのねらいを上回ることがあります。児童の伝えたい思いは,ポスターにとどまらず,「ゆうちょ財団主催の『名言はがき等コンクール』に出展して,思いを全国に伝えたい。」と広がりを見せます(図3)。丁寧に課題をつくり,児童の思いを育ててきたので,ここでも自発的に教科関連学習になりました。教師は何も言わずとも,書写で学習した「文字の大きさ」や「ていねいさ」「文字の太さ」といった書写的な工夫を取り入れたのです。このように,意図的に教科横断的な学びをすることにより学習効果は高まり,いつでも滑らかに使える知識や技能として身につけることができるのだと考えています。教科横断型学習のメリット このように,伝えたい思いに沿って,表現の場と表現方法を用意することで,身につけた知識を意識的に活用する児童の姿が見られます。あらかじめ,書写の硬筆学習からルーブリック表を作っておくことで,児童自らが目的に合わせて,自分のパフォーマンスを高めることができます。自己評価の基準が明確なので,自然と質の高いものができあがります。ポスターで思いを伝える図2 JR小岩駅に貼られたポスター(パンフレットを貼り合わせて作成)表1 ルーブリック表(書写の教科書を分析して児童が作成)文字の大きさていねいさ文字の太さA・そろっている・タイトルは大きく・ていねいな字・二重・フェルトペンでこく・かげをつけるB・見やすいー・タイトルは太くC・小さすぎる・大きすぎる・雑な字・すべて同じ太さ11現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 書写特集

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