私が授業を行ううえで,大切にしていることがあります。それは「問題や問いが,どれだけ子どもたちのものとなっているか」です。一方的に大人から与えられた問題や問いに対して,子どもたちはどこか他人事のように考えます。そうならないために,社会科の授業では,①身近な教材を扱うこと,②子どもたちに教材との関わりをもたせることなどに留意しながら授業を構成しています。本実践では,子どもたちも利用していた学童の待機児童問題を取り上げ,それが解決されたという事実から,問題意識を高めていきました。 「ぼくは選挙に行かなくていい,行く必要がないと思う。」前小単元「わたしたちの暮らしと憲法」の学習を終え,A児が書いた学習感想です。本実践では,この素直な反応を受け止め,社会や政治への関心の低さに着目して教材を選び,一人一人が社会の一員である自覚をもつための手立てを織り交ぜた授業をつくりました。学習を終えたA児は「これから自分たちが関わる政治に,ぼくも興味をもつことが大切だと思う。」と書いていました。最初は無関心だった子どもの変容が,学習感想から伝わってきます。 具体的には,「意識を視覚化する振り返り」「問いを検討する協働的な学び」「社会に参画する場の設定」を主な手立てとしました。順に紹介します。 授業を振り返り,学習感想を書かせることはよくあります。ただ,「感想を書いてください」という教師の指示では,何を書いていいのかわからない,という声が子どもから聞こえてきます。私もそのような声を聞いていた一人でした。そこで,子どもが考えていること,思っていることを明確にするために,自分の学びをグラフに視覚化することにしました。社会教科の視点東京都練馬区立石神井東小学校主任教諭 鈴すず木き 雄ゆう士じを意図して設定することになりました。縦軸の「自分が関われたか?」は,憲法の学習をした際,18歳選挙権について取り上げていたことで,子どもたちから自然と出されました。 子どもたちは授業を振り返り,まず自分がグラフのどこに位置付くのか考えます。そして,そこに位置付けた理由を振り返りとして書きます。そうすることで,その時間にわかったことやわからなかったこと,どのようなことを考えたのかなどを振り返りに書くことができました。さらに,子どもたちが目に見える形で自分自身の変容を感じることができます。学習中も「何か新しいことを知れたかな?」「自分から考えられたかな?」など,意識や学び方に変化が見られるようになりました。授業で大切にしていること子どもの素直な反応から授業を構成意識を視覚化する振り返り子どもたちが社会との関わりを感じる・考える授業~6年「わたしたちの暮らしを支える政治」~ どのような項目をグラフで振り返るかは,子どもたちと話し合って決めました。その結果,ポジショニングマップ~どのように願いを実現している?~政治について、どのくらい考えられたか? 自分が関われたか?どれぐらい,だれが実現しているのかを知れたか?01010090102030405060708020304050607080901005時間目4時間目どうして待機児童数が0人になったのだろう?地区の学童待機児童数年代人数平成29年6人平成30年21人平成31年15人(40人)令和2年0人?・縦軸…思考と参画意識・横軸…知識・理解12現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 社会特集
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