検討した結果,児童は先の5つの経路から,次のように3つの選択肢(価値命題)を創出しました。 第2時の振り返りでは,次のような児童の記述が見られました。 図2にあるように,児童が決定の根拠にしたデータは質的データと量的データが混在したものでしたが,個人,グループの解決を経て,児童からは,データの種類の各項目を○△×で評価し,それを3,2,1と数値化して,その合計(経路アは15,経路ウは20,経路エは13.5)を,行き方を決定するための指標とする方法が提案されました。多く第3時 指標作成と納得解の創出 第2時における児童Ccの考えをもとにした表を配布しました(図2)。図2 児童Ccの考えをもとに作成した表 多様な価値観を認めつつ,目的に合ったよりよい選択肢や納得解を協働的・対話的に探究し,意思決定していく資質・能力を育む授業では,次のようなことがポイントになります。おわりに これらのことに留意し,今後も児童が自分ごととして本気になって意思決定することを意図した算数の授業を児童と共に創っていきたいと思います。の児童は,この方法を「わかりやすい」「比べやすい」と評価しましたが,中には「価値観が違うのだから,この数で計算していいのか」という意見もありました。 そこで,安全性や公共性,効率性等の多様な価値観のうち,何を最も重視するかについても話し合いました。多数決をとると,最も重視する価値観は,安全(危険)が30名,迷惑さが1名,安心が1名,安さが1名,無回答が1名でした。 以上のことを踏まえて,児童らは「安全で安心,そして迷惑がかからず安く行くことがよいから,経路ウで最高裁判所に行く」という行き方で合意形成しました。その後の活動 決定した経路の実行と振り返り 実際に経路ウで最高裁判所に行き見学をしました。その後,決定した経路とその決定過程を振り返るとともに,来年,社会科見学を行う5年生に伝える方法を考えました。以下は見学後の振り返りの一部です。経路ア…早く,安く,疲れずに行ける。経路ウ…早く,安く,楽で,危険がなく,よい景色 を見て行ける。経路エ…あまり歩かず,迷惑をかけずに行ける。Cd:5年生には(6年生の今回の実践を聞いての)感想や選び方などをあらかじめ書き,話し合って,自己決定してほしい。Ce:ルートを全て出して,よさと悪さを書いて,今回使ったウについては詳しく書きたいです。Ca:~の場合は○。~の場合は×という考え方が大切だと思った。Cb:みんなが何を求めているのかが違うからア,イ,ウ,エ,オと変わる。多分,みんなの価値観が違うからそろえることは無理だ。もしそろえるなら,価値観をそろえる,ようするに何を重視するかによる。Cc:(表にまとめ,比較し)私はウがいいと思う。・問題場面が児童にとって自分ごとになっていること。・問題場面に対して,児童に価値観を設定させ,その価値観をもとに問題を発見させたり,解決させたりすること。・問題を解決するために必要な情報を収集・整理させること。・合意形成するために数学的な手法を用いて多面的に考察させること。・児童が自ら選択肢を作成し,その背後にある価値観を顕在化しながら,合意形成を図るための具体的な発問や指示を準備しておくこと。15現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 算数特集
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