複雑性と不確実性がますます進む現代社会においては,一人ひとりが他者とつながり,対話し,創造し,あるべき変革に取り組むことのできる持続可能な社会のつくり手として参画することが望まれます。そのような社会をつくるプロセスにおいては,利害や価値観が対立する状況下で,粘り強く対話を重ね,妥当な最適解・納得解を共有していくことが求められるようになります。「社会科」や「総合的な学習の時間」ではなく,教科「理科」として,どのようなアプローチが考えられるのでしょうか。 現在の学校教育で「主体性」といった場合,例えば「主体的に学びに向かう力」など,児童による自発的な行動や態度を指す場合が多く,どちらかといえば個々人が自分で考え,行動することが想定されています。しかしながら,未来社会を生きる児童にとって本当に必要な「主体性」とは,今の現実世界や社会状況は,自分たちで作り変えることができるという「主体性」です。そこでは,他者との相互関係の中で意思決定や行動を決めていくことが前提となっており,そのような社会の規範と照らして律することで責任ある行動にもつながっていきます。 2015年の国連総会で採択された17の持続可能児童に求められる「主体性」とSDGs理科教科の視点SDGsの実現をめざす理科授業宮崎大学教授 野の添ぞえ 生すすむ 図1 国連の持続可能な開発目標(SDGs) 出典;国連広報センターhttps://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/はじめに目標2 :飢餓をゼロに目標3 :すべての人に健康と福祉を目標11:住み続けられるまちづくりをは直接的に理科の学習内容と結び付けられ,さらに視点を広げれば,が間接的に理科の学習内容と結び付けられます。目標7 :エネルギーをみんなに そしてクリーンに目標9 :産業と技術革新の基盤をつくろう目標12:つくる責任つかう責任目標13:気候変動に具体的な対策を目標14:海の豊かさを守ろう目標15:陸の豊かさも守ろうな開発目標SDGsでは,生物多様性や地球温暖化といった環境問題だけでなく,貧困や教育,ジェンダー,まちづくりといった経済・社会系の課題も含まれました。先進国と開発途上国の両方が対象とされており,国や政府だけでなく,民間,市民社会,そして市民によるパートナーシップでの取り組みが想定されている点が特徴的です。また,ある目標を達成するためには,むしろ別の目標と関連づけられる問題にも取り組まねばならないことも多く,目標はすべて相互作用的な位置付けとなっています。理科は比較的多くの項目で関連しており,16現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 理科特集
元のページ ../index.html#16