歌詞から想像する様子を身体の動きで表現する※『令和元年度第54回千葉県小・中学校音楽教育研究大会南房総市原大会』研究紀要クセントがつく感じなどが自然と感じ取れます。「ス」というのは音がなく,間まをとるために「ス」と言います。 鉦かねの口唱歌も,「チッチャンチャチャチキチチャンチャチャン」と口に出して言ってみると,鉦の音色の感じとリズムがわかります。 締太鼓のリズムを何回も繰り返して演奏する地打ちのリズムにのせて,大太鼓を即興的に入れていく学習活動を構想できます。そこに鉦のリズムを重ねたり,リコーダーで簡単な旋律をのせたりしていくと,和のアンサンブル(合奏)ができます。部分的にでも口唱歌をうまく活用し,教室にある楽器で代用しながら祭り囃子の和のアンサンブルを体験的に学習していくことができます。 次に,地域の民謡の学習に取り組んだ実践事例を紹介します。令和元年11月,千葉県音楽教育研究大会で公開された授業実践例です。 千葉県市原市に昔から伝わる《養老川舟唄》を教材とするこの授業では,そのよさや特徴を味わうことを目標として,小学6年生を対象に3時間計画で実施されました。 《養老川舟唄》は,いわゆる「追おい分わけ様式」に分類される,「拍のない」音楽の一つです。音楽は一般に,一定の間隔をもって刻まれる拍の流れにのって演奏されることが多いですが,日本の民謡の馬ま子ご唄や舟唄などに代表される「拍のない」音楽というものもあります。声を朗々と伸ばし,比較的自由な間・リズムで歌われることがその特徴です。 この授業で印象深かったのは,歌詞から想像する様子を身体の動きで表現したり,民謡独特の歌い方である歌い尻やこぶし回しなどを旋律線で表現したりする活動や,鑑賞で聴き取ったことや身体を動かして気づいたことをもとに,実際にグループで歌っ《養よう老ろう川がわ舟ふな唄うた》の授業実践事例から※てみたり,ゲストティーチャーをお招きして,その歌声を模倣して歌ってみたりという体験活動がたくさん取り入れられていた点です。 また一方で,ゲストティーチャーに質問するというかたちで,子どもたちが「問い」や「疑問点」をもちより,例えば歌の終わりに合いの手が入ることについて,「なぜ最後は一緒に歌うのだろうか」など,終始,思考を働かせて取り組んでいたことも印象に残りました。「拍のない」旋律の感じから,「川の流れ」や「船頭の動き」を想像するなど,子どもたちなりに音楽に意味づけをし,そして実感をもって《養老川舟唄》のよさに迫る学習となっていました。 我が国や郷土の音楽についての学習は,単に鑑賞して終わりになったり,教師から与えられる知識を学ぶだけにとどまったりしがちです。子どもたちが実感を伴って,自分ごととして,我が国の音楽文化の意味や価値を理解するにいたってほしいと,切に願っています。 そのためには,口唱歌を実際に自分たちで歌ってみるといった体験活動や,民謡の旋律線をなぞってみたり,仕事歌などでは,その歌の歌われる状況を想像して身体を動かしながら歌ってみたりする活動が効果的です。 子どもの身近なところにある音素材から始めること,実感を伴った理解を促す学習指導の工夫,音楽づくりの活動を取り入れ部分的にでも伝統をつくり変え創造する学習としていくこと,地域の人材の積極的な活用といった工夫により,ぜひ子どもたちに,我が国や郷土の音楽のよさを伝えたいと思います。おわりにゲストティーチャーの歌声を聴く21現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 音楽特集
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