教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.1 (小学校版)
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 本校の学校教育目標は,「夢を大切に 心豊かにみずから学ぶ子」です。校舎の通路には,子ども一人ひとりの「夢」や「目標」が写真と一緒に掲示されています。子どもたちの愛らしい笑顔は,一人ひとりのよさが生かされる多様な学びや豊かな自己実現を支える教育とはどうあるべきかを私たちに問いかけています。互いのよさを生かし,共に学び共に育つ子どもたちに「日本の魅力」をテーマに温泉を紹介しているグループ全校児童の「夢」や「目標」を掲示した「ゆめたまこみち」 本校は平成27年度から6年間にわたり,外国語教育の文部科学省研究開発校,市教育委員会研究指定校として,『ONE WORLD Smiles』代表著者の文教大学教授 金森強先生のご指導を受けながら,授業研究に取り組んできました。授業づくりで追求してきたのは「相手意識」と「コミュニケーションの質」です。 今年度の授業から6年生の取り組みを紹介したいと思います。【Lesson 2:My town is beautiful.】 単元末のFinal Activityの活動内容を「横須賀の魅力をALTの先生に伝えよう」とカスタマイズしました。 単元の導入時,先生はALTに話しかけ,横須賀についてのやり取りを子どもたちに見せます。ALTは横須賀のことはよくわからないという反応をします。子どもたちは次第に,ALTに横須賀のことを知ってほしい,横須賀のよさを紹介してみたいという気持ちになっていきました。 ここで大切にしたのは,「ALTは横須賀のことを知らない」という状況です。子どもたちは,ALTがどんなことに興味がありそうか,どんなことを知りたいと思っているか,何を紹介したらよいか,伝える時にどんな工夫をしたらよいかなど,相手意識をはたらかせて考え,内容や表現の工夫をしようとします。 今回は「協働」を大切にして,グループでの活動にしました。子どもたちは,自分にはない発想等に刺激を受け,表現を広げようとしていました。最終発表を終え,ALTは「ありがとう。横須賀の魅力がわかったよ。今度はさらに日本のことを知りたくなったよ。」とコメントしました。この単元での学習はLesson 3 へとつながっていきました。【Lesson 3:Welcome to Japan.】 この単元では,Final Activityの活動内容を「ALTに楽しく聞いてもらえるように日本の魅力を紹介しよう」「自分たちも楽しく日本の魅力を伝えよう」とカスタマイズしました。 「楽しさ」の追求は子どもたちの主体性を育みました。表現の広がりや伝え方の工夫がさらに見られるようになりました。キーワードや一番伝えたいところを繰り返して分かりやすくする,間を取る,内容によって声のトーンを変える,発表の始まり・終わりを工夫する,写真撮影などの動作をしたり寸劇を入れたりして引きつける,聞き手に質問する,その子ならではの多様な表現をめざしてポスターを見せるタイミングを工夫するなど,その子,そのグループならではの伝え方の工夫が見られました。 その過程で,子どもたちはゴールを見据えて自分たちがすべきことを逆算し,自ら練習に取り組んだり,活動を見直したりしていました。目的をもって何度も練習した結果として,英語の語彙・表現への慣れ親しみも生まれました。英語やコミュニケーションが苦手な子も,グループで一緒に活動する中で,自分のめあてに向かって頑張りました。このように,目的・場面・状況に応じて相手意識をはたらかせ表現を工夫する中で,思考力・判断力・表現力や主体的に学習に取り組む態度は育まれていくと考えます。23現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 英語特集

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