今日的な教育課題の一つに,持続可能な開発目標「SDGs」(Sustainable Development Goals)の達成があげられます。このSDGsは道徳科と深い関係があるといえます。なぜならば,SDGsは,持続可能でよりよい社会の実現を目ざし,「誰一人取り残さない」ことを目標としているため,よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うことを目標とする道徳科と関連が深いからです。 そのため,道徳科においてSDGsを考えることは,子どもたちの道徳性を養うことにつながるのです。 道徳科の中だけで,SDGsを一度のみ取り上げても,子どもたちの印象に残るものにはならないと思われます。そこで大切になってくるのが,子どもとSDGsとの出会わせ方です。 例えば,道徳科でSDGsを扱う前に,朝の会などでSDGsの話題を投げかけ,身近な生活から考えていく機会を設けます。その具体としては,SDGs17の目標(下の図)を提示し,SDGsの簡単な紹介とともに,自分たちが関われそうなものはどれかを考えることがあげられます。 これは,学級経営とも関わってくることですが,教師が日頃から社会的な課題について興味・関心を示す姿は,子どもたちに影響を与えます。 ここでは,SDGsに関連した教材『トキのまう空』を用いた授業プラン例を紹介したいと思います。この教材の内容項目は,「D 自然愛護」です。SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」と関連しています。(1)教材概要 教材:『トキのまう空』(教育出版,5年生) 内容項目:D 自然愛護【教材の概要】 日本国内のトキは昭和42年には,10羽までその数を減らしていました。「トキ博士」と呼ばれていた近ちか辻つじ宏こう帰きさんは,トキの保護を行います。人工ふ化を試みますがうまくいかず,とうとう日本のトキは絶滅してしまいます。それでも諦めず,中国から贈られたトキで人工ふ化を続け,ついに成功します。そして,近辻さんらの思いに佐渡の人々も賛同し始め,佐渡の空に308羽のトキが戻っていったという話です。 トキを守ることが人を守ることにつながるのはどうしてかという話題をもとに,自然環境の大切さを考える最適な教材といえます。(2)本授業プランのねらいと主張点【ねらい】 「トキを守ることは人間を守ることと同じ」という言葉の意味について考えることをとおして,人間も自然の中で生かされていることへの理解を深め,自然環境を大切にし,持続可能な社会の実現に努めようとする道徳的実践意欲と態度を育てる。【プランの主張点】 教材とSDGs関連資料を紐づけて考えることで,自然愛護についての理解を深める。(3)授業プラン例①事実を確認し,感想を共有する 確認されている 8,300種の動物のうち,8%は絶滅し,22%が絶滅の危機にさらされている(2018年,国連広報センターによる)ことを表すグラフを作成し,提示します。 ここでは,グラフを見た率直な感想を言い合い,共有します。また,このような事実から,SDGs 道徳教科の視点SDGsを考えることをとおして,道徳性を養う鳥取県鳥取市立末恒小学校教諭 門かどわき 大だい輔すけ道徳科とSDGs子どもとSDGsとの出会わせ方SDGsに関連した教材を用いた授業プラン例SDGs17の目標出典;国連広報センターhttps://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_logo/24現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 道徳特集
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