教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.1 (小学校版)
8/36

 GIGAスクール構想によって,多くの学校で子どもたちに一人一台タブレットやパソコンなどの端末が行きわたった頃ではないでしょうか。学校でもタブレットやパソコンを利用することがあたりまえとなってきましたが,家庭では子どもたちは日常的に使っています。子どもたちの利用実態とトラブル,対策,指導方法までを解説します。 内閣府の「令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果」(2020年3月)によると,小学生のインターネット利用率は86.3%に上ります。まだ自分のスマホを持っているわけではなくても,多くの子どもが中古のスマホやタブレット,ゲーム機などでネットを利用しています。つまり,ほとんどの子どもたちには家庭で自由にネットへ接続できる環境が整っているのです。 今の小学生は幼い頃からYouTubeに慣れ親しんでおり,スマホを持ち始める中学年前後からはLINEで保護者や友達とやりとりを始めます。文章でのやりとりがうまくいかず,友達と仲違いをしたり,いじめにつながったりすることもあります。 また同時期くらいからは,TikTokに動画などを投稿する女児も現れます。男児はSNSではありませんが,Nintendo Switchやスマホなどを使いバトルロイヤル系ゲームで知らない人とプレイしています。小学生でも,主体的にSNSへ動画などを投稿したり,知らない人とも交流したりしている実態があるのです。ネット接続端末を持ちSNSも使う小学生たち ここからは,子どもたちが利用しているサービスと具体的なトラブルをご紹介していきましょう。 小学生には,YouTubeの人気は絶大です。前述のように自由にネットへ接続できる環境があるため,家庭では好きな動画を見ています。テレビに出演するタレントよりYouTuberに憧れる子どもや,将来YouTuberになりたいと考える子どもも少なくありません。 YouTubeには,エルサゲートと呼ばれる子どもに不適切な動画が投稿されていることがあります。子どもが意図せず,このような動画を見てしまうこともあります。また,YouTuberの真似事をして動画を投稿し,その結果,炎上してしまう子どももいます。炎上した結果,個人情報が特定され,ネット上にさらされているのです。 過去には,危険なチャレンジ系動画が流行したことがあります。2019年には米ミシガン州の12歳の少年が,可燃性の液体を体に塗って火をつける「ファイアチャレンジ」動画を見て真似したところ,上半身に2度の火傷を負いました。YouTubeではこのような危険チャレンジ系動画の投稿は禁止されましたが,TikTokで危険チャレンジ系動画を投稿したり,Instagramで「いいね」が欲しくて危険な自撮りに挑戦したりしてしまう子どももいます。 小学生女児の間ではTikTokが流行中です。筆者の子どもは小学6年生ですが,2年前くらいから同級生の女の子たちが,公園でスタンドに立てたスマホでTikTok動画を撮影している様子を目にしています。小学5年生の時には,20名近い女の子たちが利用していました。お互いにコメントをし合っているうちに喧嘩に発展し,アカウントの通報合戦になっていたそうです。中にはアカウント停止処分を受けた子どももいました。このように,子どもたちは動画共有サービスに慣れており,閲覧だけでなく投稿に抵抗がない子も少なくありません。 TikTokは人気の音楽を使い流行っている振り付けを真似するだけでいいため,発信したいことがない小学生でも投稿できます。しかもAIでそのような動画を好む人に表示されるため,フォロワーが0でも他のSNSより「いいね」が集まりやすくなっていまエルサゲートから危険チャレンジ系動画までTikTokで誘拐・性被害につながる例も国語教科の視点TikTok・ゲームで知らない大人とやりとりする子どもたちITジャーナリスト・成蹊大学客員教授 高たか橋はし 暁あき子こインターネット利用率(機器・学校種別)注:「インターネット利用率」は,回答した青少年全員をベースに集計。出典:内閣府ホームページ「令和元年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果」インターネット利用率スマートフォンタブレット携帯ゲーム機総数93.263.329.631.286.337.633.840.895.165.631.130.3小学生中学生050100(%)8現代的な教育課題とこれからの授業デザインー教科の視点 国語特集

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る