「子どもが主役」の授業デザイン教科の視点 生活特集の視点教科 子どもたちが生活する地域には、たくさんの魅力的な人やもの、出来事や場所があります。そんな場所や人を対象にして、自分のまちの勉強をすることができるなんて、生活科って本当に魅力的だと思いませんか?自分のお気に入りの場所や関わりのある人のところに、授業で行ってよいんですよ。それだけでなく、クラスの友達のおすすめで、自分が知らない場所にも行くことができます。そこから地域との新たな出会いが始まります。そして、地域とのつながりや地域を見る目を広げていくのです。それでは、子どもが主体となって学ぶ生活科はどういうものなのでしょうか? 2年生の生活科の活動に、「まちが大すきたんけんたい」と「えがおのひみつたんけんたい」があります。子どもたちがまちの人たちの笑顔の秘密を、探検活動を通して探っていく活動です。それだけでわくわくしてきませんか?しかも、まちの人のお仕事を体験させてもらっちゃおうというのです。見学をしたりインタビューをさせてもらったりすることはよくある活動ですが、小学校2年生でのお仕事体験です。子どもたちがわくわくしないわけありません。そしてまた、「本気」にならないわけありません。なぜなら、子どもたちだってわかっています。働くということが真剣勝負であるということを。仕事は、お金を稼ぐという意味では経済活動であり、ものやサービスをつくり生み出すという意味では生産活動であり、人と関わったりコミュニケーションをしたりするという意味では社会的活動です。そして、なによりも働く人たちの生活そのものでもあります。そんな生活の一部を自分たちが体験させてもらうというのですから、中途半端な気持ちではできないことを強く感じています。 まち探検では、探検活動を繰り返す中で地域の人との関わりを深めることを期待しています。「まちが大すきたんけんたい」では、地域の人と関わるきっかけをつくり、人となりを知り、関わり続けることへの意欲をもつことができたら大成功だと思います。「えがおのひみつたんけんたい」への下地も十分に耕されていることでしょう。 そして、2つの単元の活動に時間的な「間」があるということが特徴的です。子どもたちが「まちが大すきたんけんたい」の活動で、自らすすんで地域の人との関わりを求めたり、自分の生活とのつながりについての見方や考え方を深めたりするためのチャンスを与えてくれます。生活科では、「生活科から生活化へ」と学びが活用されることが、誕生当時から期待されています。そのためには、時間的なゆとりや長い時間で子どもの学びや成長を捉えることが必要であり、また活動計画そのものも内容だけでなく、繰り返しとゆとりのある時間設定で計画することが必要です。子どもたちが自分で成長するチャンスをしっかりと保障してあげたいですね。「急がば回れ」という心持ちが必要です。カリキュラム・マネジメントの大切なポイントです。 さて、そうすると、これら2つの単元の「間」をどのように指導するかということが、先生方の腕の見せ所かもしれません。「まちが大すきたんけんたい」の活動では、きっといろいろなカードや作品、子どもたちの写真や探検マップなどが生み出され、教室の中に掲示されていくことでしょう。また、子どもたちが関わった地域の人たちの写真や言葉も残されていることでしょう。これらの学習活動を通してつくられてきた成果物を大事にしていきたいです。もちろん、教室掲示で生活科だけが優先されるわけではないですが、ここでつくられたものは「えがおのひみつたんけんたい」の活動の教材にもなるものです。 たとえば探検マップを残しておきます。そうすると、どうなると思いますか。子どもたちの中には探検マップを見ていたり、読んでいたりする子がいるはずです。そんな子に話しかけてみてください。「探検の後、おうちの人と行ってみたところある?」「もう一度行ってみたいところある?」と。朝の会などで、全員に尋ねてみてもいいですね(私だったら、あえて生活科の授業でない時間を選びます)。そうしたら、必ず「お母さんと行ったよ!」「習い事の帰りにお買い物したよ!」「家族と図書館で本を借りたよ」という声が聞こえてくるはずで16ー2つの探検活動の「間」を生かす学習材を成長させる地域の人へのあこがれを育てる生活科京都女子大学准教授 齊さい藤とう 和かず貴たか生活
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