教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 (小学校版)
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「子どもが主役」の授業デザイン 2教科の視点 算数の視点教科特集(1)板書を見ながら授業の振り返りを行う まず板書を見て今日の授業を振り返り、「今日の授業で一番大切だと思ったこと」や「これまでの振り返りを使えたか」などについて、ノートに書きます。12 授業における「振り返り」は、子どもが自らの学びを解釈し、次の学びに向かうことができるようにするうえで、非常に重要な役割をもっています。本稿では、授業終末部の振り返りに焦点を当てて、子ども主体の算数授業づくりについて考えていきたいと思います。 そもそも、子どもにとって価値ある振り返りとは、どんなものなのでしょう。ある時、受け持った6年生の子どもたちに「振り返りは何のためにするの?」と尋ねてみました。すると、子どもたちの半数は、「わからない」と答えました。つまり、その子どもたちにとって、授業中の振り返りは、形式的で無意味な活動になってしまっていたのです。何も考えず、黒板の言葉を写して終わり。これでは、子ども主体の授業づくりをしているとはいえないですよね。 一方、もう半数の子どもたちからは、振り返りをする意味について、多様な答えが返ってきました。 先ほど「わからない」と答えた子どもたちも、この回答には納得していました。「学んだことを振り返って、理解を深め、使えるようになる。そんな振り返りをしたいね」と、子どもたちと思いを共有することが、私が振り返りを変えていく第一歩でした。 振り返りには、目的や子どもたちの実態に応じて、多様な方法があると思います。これから紹介するのは、子ども自身にとって価値ある振り返りを目ざし、子どもたちと試行錯誤する中で生まれた一つの形です。 私は授業終末部10分間程度で、次のような流れで子どもが振り返りを行う時間を設定しています。・自分がわかっているかどうかを確かめるため。・わかったことを整理して、深く理解するため。・学んだことを次の学習に生かすため。端末でノートの写真を提出(ロイロノートを使用) (2)端末を使って、振り返りを共有する 振り返りを書いた後は、ノートの写真を撮り、端末上で共有します。こうすることで、お互いの振り返りから学び合うことができるようにしました。(3)振り返った内容について教師と対話する 教師は、子どもの振り返りを読み、黒板の前から一人一人に話しかけ、簡単に対話していきます。 例えば、「図をかくことが大切だ」という振り返りをしていた子がいた場合、(4)振り返った内容を板書に書き加える 子どもとの対話をとおして価値付けた内容は、教師が板書に書き加え、学級全体に共有化を図ります。 これまでの振り返りが使えたかを問うことで、振り返る意味や価値を感じやすいようにしています。といった具合です。 教科担任制で毎日100名程度の子どもと算数授業をする私は、毎日全員のノートを丁寧に見る時間の余裕がありません。また、ノートの記述からだけでは、その子が何を学んだのか読み取れないこともあります。そこで、その場で振り返りの内容について簡単に対話することで、その子が大切だと感じている見方・考え方や学び方などを明確にし、価値付けていくことにしています。どんな内容であったとしても、それぞれの子の発見を教師が共に喜び、その価値をわかり合うことが、子どもたちが明日の授業を主体的に創っていくことにつながると考えています。 10分間で話せなかった子がいた場合には、次の時間はその子から話すようにするなど、一人一人との対話と価値付けは一番大切にしているところです。T:どうして図をかくことが大切だと思ったの?C:図がかけたら意味がわかって、式が立てられるようになったからです。T:なるほど!図をかくと問題の意味がわかって、式もわかるのか。それはいい発見をしたね。子どもにとって価値ある振り返りとは「板書」と「対話」で振り返るー子ども主体の算数授業づくり~子どもにとって価値ある「振り返り」を~広島県三次市立十日市小学校教諭 瀬せ尾お 駿しゅん介すけ算数

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