教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 (小学校版)
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「子どもが主役」の授業デザイン 2教科の視点 算数特集(1)教材について 円の複合図形の面積の求め方を考える時間を例に、実際の授業と振り返りの様子を紹介します。(2)授業の展開●「わかった!」「なるほど!」を生み出す仕掛け 授業前に、子どもたちに左のシートを渡し、好きな部分に色を塗らせて図形を作成させておきました。子どもたちが考えたのは、下の板書に掲示している①~⑥の図形です。これらの図形を用いて、授業を展開していきました。 授業では、まず6種類の図形を提示し、子どもたちに「面積を求めるのが簡単そうな順番」に並べ替えてもらいました。実際の授業では、子どもたちは下の板書にある①(簡単)~⑥(難しい)の順に図形を並べ替えています。(①~③は既習) その後、①から順に面積を求めていくのですが、途中でおもしろい反応が見られました。教室のあちこちから、何度も「あ!」「わかった!」という小さな声が上がったのです。●「なるほど!」から「だったら!?」へ 何が「わかった」のか尋ねると、わからなかった④の面積の求め方がわかったそうです。その子に考え方のヒントを出してもらうと「④は、①と③でできる」とのこと。それを聞いた他の子たちも、「なるほど!」と納得の様子です。その後全員で「①-③=④」(①から③を取った形が④)であることを共有すると、さらに「だったら⑤もできる」「⑥もできる。ほら、③と② 左の図は、「葉っぱ型」や「レンズ型」とよばれる図形です。この図形の面積を求めるには、いくつかの図形を組み合わせて考える必要がありますが、手順が多く、計算も複雑です。しかし、ここで大切なのは計算ではなく、初めて見る図形でも、「既習の図形を組み合わせる」ことで面積を求められることに気付くことです。授業後の子どもたちの振り返りに、この言葉が出てくることをねらって、授業を行いました。(3)この授業での振り返り この授業での振り返りの様子を紹介します。で…」と、騒ぎ始める子どもたち。④が①-③でできることを発見し、既にわかっている図形を組み合わせることで、未知の図形だった⑤、⑥の図形の面積も、同じように求められることに気付くことができました。 こうして、図形に番号を付けたことで、③-②や②-④など、番号で簡単に組み合わせ方を表現することができました。図形の組み合わせ方のみに焦点を絞り、その考え方に価値を感じる展開をつくることができたと思います。 子どもによって内容や表現は異なりますが、この授業では「図形を組み合わせること」や「どんな図形がもとになっているか考えること」が大切だと振り返っている子が多く見られました。 この振り返りの方法を始めて1か月が経つと、それまで形式的に振り返りを書いていた子どもたちも、ほぼ全員がその授業で一番大切だと思う見方・考え方や学び方などを自分の言葉で表現できるようになりました。これは、子どもたちが、教師との対話を通して、自分が見つけた見方・考え方を意識し、そこに価値を感じることができたからだと思います。 また、自分と教師の対話だけでなく、友だちと教師との対話を聞くことが、「勉強になる」という子や、端末を用いて、お互いの振り返りを読んだり参考にしたりする子が次第に増えていきました。 振り返りの時間が自分の学びを解釈するだけではなく、友だちの振り返りの内容や目のつけどころについて学ぶ時間へと少しずつ変化していったように思います。子ども主体の授業づくりを目ざして、これからも試行錯誤を続けていきたいと思います。T:〇さん、『いつもと同じように』ってことは、前にも知っている形にしたことがあったってこと?C:円の面積とか、三角形とか、全部知っている形に戻して考えたじゃないですか。その時です。T:そうか、『今回も』それが大切だと思ったんだね。C:はい。『今回も!』ですね。13実践事例 6年「円の面積」子どもたちの変化ー

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