教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 (小学校版)
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「子どもが主役」の授業デザイン 2教科の視点 理科の視点教科特集 先生方は、普段、授業をどのように構想されますか? おそらく、児童の実態や、授業で取り扱う素材特性などを踏まえ、目標を設定するとともに、具体的な指導法を検討しておられると思います。その際、児童の実態をひとくくりにして捉えがちではないでしょうか。しかし、学級には様々な特性をもった児童が存在し、一人一人の抱える「学びにくさ」は異なります。本稿では、「理科の学びにくさ」を起点に、具体的な支援の在り方について検討していきたいと思います。 予想場面では、①「予想はできるが、根拠を考えることが難しい」、②「何が確からしいのか判断できない」、③「考えはあるが、うまく文章で表すことができない。または、自分の予想に自信をもてない」などの、学びにくさを感じる児童がいることが想定されます。これらの児童に対する支援として、以下の3点を紹介します。①予想材料の共有 「予想材料」とは、予想の根拠として使える材料のことであり、「既習事項」や「日常経験」が挙げられます。個人予想に入る前に、これらの予想材料を全体で共有する場面を設定することが、根拠を伴った予想を立てるための支援になると考えます。②確からしさを判断する基準の共有 予想の妥当性を判断することは、児童にとって、とても難しい活動です。そのための手立てとして、「確からしさを判断する基準」を全体で共有することが有効だと考えます。まずは、予想モデルについて納得できるかどうかを選択します。そして、予想モデルの「確からしさ」を考える活動を通して、「確からしさを判断する基準」を全体で共有します。基準は、「理由が書いてあるか」「問題に対する予想になっているか」「これまで学んだことから理由を考えているか」「日常経験から理由を考えているか」などが挙げられます。これらの基準を共有することで、基準に基づいた妥当性の吟味を行うことができると考えます。 実験観察場面では、①「実験の手順が理解できない」、②「何に注目して実験すればよいか分からない」、③「何に注目して観察すればよいか分からない」などの、学びにくさを感じる児童がいることが14メンバーAさんTさんKさんHさん考えかがみではね返した日光を重ねるほど、温度が高くなると思うよ。なんとなくそう思ったの。かがみではね返した日光を重ねるほど、より明るくなると思うよ。だって、光の的当てゲームを行ったときに、かがみではね返した光を重ねるほど、より明るくなったから。日なたと日かげでは、日なたの地面の方が、温度が高かったよね。なので、かがみではね返した日光を重ねるほど、温度が高くなると思うよ。日差しが強い夏の方が、日差しが弱い秋よりも日光を熱く感じるよ。かがみではね返した光を重ねるほど、より明るくなると思うから、明るくなった分、温度も高くなるのではないかな。4人が「かがみではね返した日光を重ねたときの温度の変化はどうなるのだろうか」という問題について、予想を話し合っています。はじめに予想場面における学びにくさ実験観察場面における学びにくさ③「悩み中」を認める交流場面の設定 予想場面では、「悩み中」の児童を認めることが、とても重要なことだと考えます。「悩み中」の児童にも「2つの選択肢で迷っている」「そもそも予想がもてない」など、悩んでいる児童一人一人に着目すると、その実態は様々です。「悩み中」の児童の考えを表明することにより、その他の児童が「自身の考えに納得してもらうには、どのように説明すればよいか」という視点をもつことができます。つまり、「悩み中を認める交流場面」を設定することにより、「理科が得意な児童」にとっては、納得してもらうための説明を考えることにつながり、「理科が苦手な児童」にとっては、理科が得意な児童の考えを参考に自身の考えを見直すことにつながります。つまり、「理科が得意な子」「理科が苦手な子」双方の学びの保証につながる可能性があると考えます。ー「理科の学びにくさ」から考える教師の支援広島大学附属東雲小学校教諭 古ふる石いし 卓たく也や理科

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