教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 (小学校版)
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「子どもが主役」の授業デザイン 2教科の視点 理科特集想定されます。これらの児童に対する支援として、以下の3点を紹介します。①視覚支援を用いた実験方法の説明 実験方法の確認場面において、実験手順を読んだり、聞いたりするだけでイメージをもつことができない児童に対しては、実験器具を使用した演示など、「視覚支援」を取り入れた説明を行うことが有効な手立てになります。その際、実験動画を用いると、画面を示しながら説明したり、重要な箇所で止めたりしながら説明を行うことができるため、さらに効果的です。②実験結果の見通しの共有 実験場面において、何に注目して実験してよいか分からない児童に対しては、「結果の見通し」をもたせることが有効な手立てになります。予想が正しければ、どのような結果になるか、つまり「結果の見通し」をもつことで、実験のどこに注目すればよいかが明確になります。③観察の視点の共有 観察場面において、何に注目して観察してよいか分からない児童に対しては、「観察の視点」をもたせることが有効な手立てになります。観察の視点を導出する際に、まずは児童の素朴な考えを表出させます。次に、共通点や差異点を整理します。そうすることで、素朴な児童の考えをもとに具体的な「観察の視点」を導出することができます。 考察場面では、①「考察に何を書いてよいか分からない」、②「実験結果をどのように解釈したらよいか分からない。または、文章で考察を表すことが苦手」などの、学びにくさを感じる児童がいることが想定されます。これらの児童に対する支援として、以下の2点を紹介します。①「主張→根拠」を意識した考察 考察場面において、何を書いてよいのか分からない児童に対しては、「主張→根拠を意識した考察」引用・参考文献玉木昌知(2020)「季節と生物(特に、植物の成長と季節の関係) ―「予想ボード」を活用した、対話的な学びを促進し、深い学びを実現するための具体的手立てについて―」『主体的・対話的で深い学びの理科学習指導のあり方』日本教材文化研究財団、pp.21-28.古石卓也(2021)「理科授業における教師の支援の実際」『広島大学教育ヴィジョン研究センター定例オンラインセミナー講演会No.92 教科教育学・心理学・日本教育学の視点からインクルーシブな学びを考える』発表資料. 考察を行う際に、最も難しいのが「実験結果の解釈の仕方」だと考えます。実験結果を適切に解釈することができない児童に対しては、「結果を解釈する視点を提示すること」が有効な手立てになります。具体的な例を挙げると、「全体の結果」を踏まえること、対照実験の結果をどちらも記載することなどが挙げられます。全体と傾向が異なる結果が出てきた際は、その結果に関する解釈も必要になるかもしれません。 このように、「結果を解釈する視点」を複数提示することにより、「記述が得意な児童」は、「多くの視点」に基づいて、「記述が苦手な児童」は、「視点を絞って」考察を記述することができると考えます。 ご紹介した、3つの問題解決場面における支援の中には、先生方が普段の授業で行っているものもあったのではないかと思います。「学びにくさ」という視点から自身の実践を見直すことが、学級の児童一人一人の特性を踏まえた授業を構想するきっかけになるのではないかと思います。  本稿が、先生方が理科授業を構想される際の一助となれば幸いです。15〔全体で共有〕〔全体で共有〕に記述する考察場面における学びにくさおわりに(結論)(実験結果)〔個人で思考〕主張根拠主張(結論)根拠(実験結果)を行うことが有効な手立てになります。実験結果か〔個人で思考〕ら何がいえるのか、つまり結論を学級全体で共有したあとに、根拠となる実験結果の解釈を個人で考えさせます。「主張(結論)→根拠(実験結果)」の順に考察を行うことが、結論を説明するための実験結果の解釈につながります。②結果を解釈する視点の提示根拠(実験結果)内容を提示する。<例>・全体の結果 (客観性)・対照実験の結果 (どちらも必要)・全体と傾向が異な る結果の解釈ー

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