教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 (小学校版)
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「子どもが主役」の授業デザイン 2教科の視点 生活特集した。カタツムリにはおすとめすの区別がありません。雌雄同体の生きものです。そして、ダイナミックな動きはほとんどありません。ゆっくりしか動かないのがカタツムリです。ザリガニにはある脱皮もカタツムリにはありません。子どもたちが飼ってみたい、かわいい、育ててみたいと思えるかどうか?子どもが主体的に関われる教材としてふさわしいか?少し疑問も感じました。更に調べてみると、本校の近くにはカタツムリがほとんどいないことや、人体に危険な寄生虫(広東住血線虫など)を媒介する危険性があることも判明しました。子どもたちが自分で見つけ、自分で捕まえて、飼育してほしいと思っていたので、約1年半育てていたカタツムリの教材化は諦めることにしました。 現在は、校長室でダンゴムシを飼っています。ダンゴムシとの出会いは教科書がきっかけでした。教科書にはダンゴムシの脱皮の写真が載っています。教科書に載っているダンゴムシなら教材としても大丈夫だろうと思いました。子どもたちにダンゴムシを見たことがあるか聞いてみると、「校庭にもいるよ」と言って捕まえては校長室に届けてくれるようになりました。今では飼育ケースに何匹いるかわからないくらいです。手のひらに乗せていた子の目の前でたくさんの黄色い赤ちゃんがあふれるように出てきて、びっくりしたこともありました。チョンと触ってみて「小さくてもちゃんとダンゴになるんだ」と丸くなった赤ちゃんを見ながら発見していました。休み時間に見に来た子が、大きなダンゴムシを「キングダンゴ」と名づけて探しています。キングを見つけた子が「おすかな?めすかな?」とつぶやいたので、すかさずダンゴムシの本を開いて見せました。そのページにはおすとめすの見分け方が書かれています。金色の模様があるのがめす、真っ黒いのがおすです。その子は「これはめすだからキングじゃなくて、クイーンだよ。」と教えてくれました。子どもの主体的な学びには、教師の出番も必要です。子どもに全てを預けることが主体性を生むと思われがちですが、ここぞというタイミングで教師の出番があります。子どもの思考だけでははい回ってしまうと感じた時、体験の価値に気付けていない時などが教師の出るタイミングです。そのためには、子どものつぶやきに耳を傾けることも大切です。 生活科の仲間の先生が、ダンゴムシを題材にした生活科の授業を実践してくれました。もちろん一人一人が「マイダンゴムシ」を育てていました。「足の数は何本?」「どんなものを食べるのかな?」「居心地のよいすみかは?」「何秒でダンゴからもとにもどるかな?」「どうやって水を飲むの?」たくさんのはてなが出てきました。観察したり、調べたりしながら、わかったことを、「ダンゴムシ図鑑」にまとめていました。ザリガニに代わる生きもの教材はこれだと感じました。 アメリカザリガニに代わる生きもの教材を探す中で子どもたちの主体的な関わりについて、改めて考えさせられました。関わりたくなる魅力があること。できれば身近な生きものがよいこと。子どもたちの声に耳を傾け、主体的な学びを支える教師の出番も大切なこと。これからも子どもたちが主役になれる生活科を目ざしていきたいと思います。17ダンゴムシが救世主!ー

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