教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 (小学校版)
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「子どもが主役」の授業デザイン 2教科の視点 道徳特集 ー実際の板書を切るということが、遠くの誰かの話ではなく、自分のこととして自覚されたのです。「私たちは基地作りをするっていう目的があるし、大切に使ってるよ」「でも、4年生が終わったら基地はなくすでしょ。だったら、意味ないんじゃ……」と子どもたちの心は揺れ動きました。●「ぼくたちが自然公園を荒らしているんじゃないの?」 話し合いが進む中で、木を切ることだけではなく、生き物を捕まえることについても同じことが言えるのではないかという意見が出されました。そして、ここまでの話し合いを聞いていた一人が「ぼくたちは大池いこいの森(活動で訪れている自然公園の名称)で木を切ったり、生き物を捕まえたりしている。だから、ぼくたちが自然公園を荒らしているんじゃないの?」と話しました。 みんなは、自然公園をよりよくしようと考え活動してきたことが、実は逆だったのではないかと問われ、これまでの活動を振り返り、見つめ直し始めました。 自分が自然公園を荒らしてしまったかもしれないと考える子どもは、木を切ることは人が生きるうえで必要なことだから仕方ないとしながらも、生き物は捕まえないほうがよいと考えました。「人が捕まえることで生き物を犠牲にしたくない」と、生き物については人が手を加えないことが、自然を大切にすることであるという価値観をつくりました。一方、人が手を加えても自然公園を荒らすことにならないと考える子どもは、際限なく木を切ったり、生き物を捕まえたりすることはよくないが、木や生き物などの自然と関わることで、自然のよさを感じてほしいと考えました。自然と関わり、よさを感じることが自然を大切にすることになるという価値観をつくりました。 子どもが道徳的な課題を自分のこととして捉えるうえで大切なことは、自分たちが体験から得た実感に基づいて考えることです。木を切りながら「森を守りたい」と考えたり、生き物を捕まえながら「長生きしてほしい」と願ったりする中で、自分が大切にしたいと考えること、つまり道徳的な価値観がつくられていきます。そして、体験に基づいて話していくことで、「自然を大切にする」ことの具体を見つめ、そこに自らの道徳的な価値観が現れ、自覚していきます。 道徳で大切にされるべきは、道徳的諸価値を教えてもらうことではないと考えます。子どもが自らの体験から得た実感に基づき、仲間と議論する中で、正しいと思うことと自らの行為のずれや、仲間の考えとの違いに迷い、葛藤しながら、自らの道徳的な価値観をつくり続けることだと考えます。そうすることで、その道徳的な価値観が確かなものになったり、つくり変わったりし、子どもたちは、よりよい生き方を見つめていくことができるようになるのです。23おわりに

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