教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 (小学校版)
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未来を拓く授業デザイン〜学びに向かう力を身につける〜教科の視点算数ー 特集の視点教科数学的な考え方学習学習数学的な見方内容内容学習内容 子どもが自ら算数の学びに向かうためには、子どもが算数を学ぶ価値を感じる必要があります。算数を学ぶ価値は、人それぞれ違いますが、算数でしか味わえない価値があります。それは「新しい知識を自ら創り出す」という価値です。 算数という教科は、系統性が強く、既習事項を使えば新しい知識を子ども自身が創り出すことができます。新しい知識を子どもが創り出す際に重要となるのが、数学的な見方・考え方です。 『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編』(p.22〜23)は、数学的な見方と数学的な考え方を以下のように示しています。【数学的な見方】事象を数量や図形及びそれらの関係についての概念等に着目してその特徴や本質を捉えること【数学的な考え方】目的に応じて数,式,図,表,グラフ等を活用しつつ,根拠を基に筋道を立てて考え,問題解決の過程を振り返るなどして既習の知識及び技能等を関連付けながら,統合的・発展的に考えること 少し平易な言葉に言いかえると、数学的な見方とは「問題を解くための着眼点」であり、数学的な考え方とは「問題を論理的に考えたり、大切な考え方をまとめ、まとめた大切な考え方を使って問題を発展させていったりする考え方」といえるでしょう。 例えば3年生で小数のたし算を学習しますが、「〜を1とする」という数学的な見方を働かせることで、小数を既習である整数のたし算にすることができます。0.3+0.2であれば、「0.1を1とする」と考えれば、3+2=5と計算でき、「答えの5は、0.1が5つ」ということなので、0.5と求めることができます。「0.1を1とする」という数学的な見方を働かせることで既習事項と結びつけ、小数のたし算という新しい知識を創り出すことができたのです。 さらに、これまで学習してきた30+40や200+600といった大きな数のたし算についても見直して、「30+40は10を1とすれば、3+4にできる」「200+600は100を1とすれば、2+6にできる」と考えたこととの共通点を考え、たし算では「〜を1とする」という共通する数学的な見方が働いていることに気づかせるのです。そうすると、「大きな数でも小数でも『〜を1とする』と考えることは同じだから、もっと小さな小数や分数でも同じように考えられるのか?」と問題を発展させ、さらに新しい知識を創り出すことができるのです。まさに、「問題を論理的に考えたり、大切な考え方をまとめ、まとめた大切な考え方を使って問題を発展させていったりする考え方」である数学的な考え方を働かせて、新しい知識を創り出そうとする姿です。 数学的な見方・考え方を働かせるというのは、以下のような「数学的な見方・考え方を働かせて学習内容に串を刺し進む」というイメージをもつとわかりやすいかもしれません。 学習内容を刺す串の役割が数学的な見方で、串を刺し進む力が数学的な考え方というイメージです。数学的な見方・考え方を働かせる子どもの姿 3年生の2・3桁×2桁の学習において数学的な見方・考え方を働かせた子どもの姿を紹介します。 1時間目に5×30の計算の仕方、2時間目に12×30の計算の仕方を考えることを一斉授業で行いました。この2時間で、子どもたちが働かせた数学的な見方は以下のとおりです。【1時間目(5×30)】・・「10を1とする」⇒九九にできる 5×30⇒5×3【2時間目(12×30)】・・ ぶんかい・がったいほうしき(10×30+2×30)・・ かけわりぶんかいほうしき(12×3×10) 2時間目終了時の子どもの課題意識(だったら!?)は「(きりの悪い2桁)×(きりの悪い2桁)でも、これまで見つけた数学的な見方は働かせられるのか?」というものでした。この課題を考えるため、3時間目は「23×12の計算の仕方を考える」とい12算数を学ぶ価値を感じるために重視すべきこと数学的な見方・考え方とは何か子ども自ら学びに向かう算数授業づくり~子どもが数学的な見方・考え方を意識した学習~東京学芸大学附属小金井小学校教諭 加か固こ 希き支し男お算数

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