未来を拓く授業デザイン〜学びに向かう力を身につける〜教科の視点 生活特集ろで、『まんぞくハシゴ』を提示しました。今までの経験から夏と仲よくなり、楽しかったという思いが残っている子どもたちですので、単元のゴールイメージは「あきとなかよくしよう」となりました。シンプルかつ明確です。そして、この言葉の奥には、「夏と同じように楽しみたいな。」「もっと秋と仲よくなるためにはどうしたらよいのだろう。」「季節が違うとどんな楽しみ方ができるのだろう。」などの思いを子どもたちの発言から感じられました。この時点での『まんぞくハシゴ』は2段くらいしかのぼっていません。子どもたちはちゃんとわかっています。この先に楽しい活動があることを。単元の途中 秋の宝物を使っておもちゃ作りを始めました。何のためにしているのか、秋と仲よくなるためです。ゴールイメージが明確だと、おもちゃ作りが楽しすぎて「秋ということを忘れてしまう。」ということはありません。 おもちゃが完成した頃、もう一度『まんぞくハシゴ』を使った振り返りをしました。ぐっとのぼっていました。頂上に近いのに、「まだ頂上ではない。」と子どもたちは口々に言います。「まだみんなで遊んでいないから。」だそうです。この先の活動をよく見通しています。みんなで遊べば、今よりももっと秋と仲よくなれるというストーリーが子どもたちの中でできているかのようです。単元の終わり クラスのみんなで遊んだ後、再度『まんぞくハシゴ』の登場です。多くの子は『まんぞくハシゴ』の頂上までのぼっていました。頂上を突き抜けている子もいました。友達と遊ぶことは多くの発見があり、子どもたちには刺激の強いものです。とっても楽しかったことが伺い知れます。「みんなと遊んで秋ともっと仲よくなった気分です。」という子がいました。みんなと遊ぶ→秋と仲よくなるというのが結びついていることがわかります。「秋も楽しいからです。」という子もいました。「秋も」という言葉に夏の単元からのつながりが感じられます。 中には、頂上一歩手前の子もいます。なぜかというと、「もう一回遊びたかったから。」「まだ満足し Aさんは頂上手前まで色を塗っています。→でみんなと遊ぶ前と後の変化を教えてくれました。でも、まだ頂上にはいかないそうです。秋は楽しいと思っているけど、もっとふれあいたいと感じているのはAさんの素直な思いだと考えます。授業後、どんな秋とふれあえたのか聞いてみたいと思います。 Bさんは『まんぞくハシゴ』の頂上を突き抜けて色を塗っています。紙からはみ出しそうです。家族に伝えたいほど、楽しかったことがわかります。学校だけにとどまらずに家でも伝えたいというBさんの思いは大切にしなくてはいけないと思います。学級全体でも紹介して共有しました。ていないから。」との理由でした。みんなが満足して終わりたいというのは教師の理想ですが、子どもたちが皆一律に同じはずはありません。理由を聞くと子どもたち一人一人の思いが伝わってきます。学校での授業は終わっても、子どもたちの生活は続いていきます。授業の中では満足しきっていなくても、家に帰ってからさらに活動が広がる子もいます。ちょっと悔しい思いをしていた子が次の単元の意欲につながるかもしれません。教師として大切なことは、子どもたち一人一人の思いを受け止めることではないでしょうか。そして、前向きな言葉掛けをしていきたいと実感しました。実際の振り返りカードの紹介 『まんぞくハシゴ』を活用した実践を紹介してきました。授業の振り返りの仕方はさまざまです。毎時間の振り返りをしているけれども、ぶつ切れになってしまっていてつながりがないということはないでしょうか。生活科で大切にしたいことは、単元を通して子どもたちの思いをストーリーとしてつないでいくこと。そして、それはゴールイメージに向かって高まっていかなければなりません。 『まんぞくハシゴ』を活用することで、さまざまな活動を通して子どもたちの思いが高まっていることや、特に単元末の振り返りの重要性を実感します。 子どもたちの振り返りには、教師も気付かされるものが多くあります。今後も子どもたちの思いを大切にした授業を創っていきたいと思います。17おわりにー
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