教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 (小学校版)
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共育のツボ 学級経営のポイントとして、若手教員の皆さんにいつも話すのは、「『担任にとって子どもはたくさんいるけれど、子どもにとって担任の先生はただ一人である』ことを意識する」ということです。 では、実際にどうすればよいのか、私が実践してきたことの中から三つ、具体例をあげます。 まず、日々の子ども一人一人の動きを見ながら、記録をつけることです。いつも胸ポケットに付箋紙を入れ、子どもについて気づいたことをすかさず書き留めます。忙しいときは名前とキーワードのみを書き、あとからMicrosoft Excelで作成した個人別記録簿に入力します。これを続けると、どの子どもにも必ずよい行いの記録が残ります。記録をもとに子どもを直接褒めたり、保護者面談で伝えたり、通知表に書いたりします。いつ、どこで、という具体性をもった褒め言葉は、「先生はこんなところまで見てくれているんだ。」という安心感を子どもにも保護者にも与え、信頼関係が深まります。 次に「1行日記」です。1行日記用に準備した用紙に、朝の時間を利用して、子どもたちに昨日のできごとや考えていることを自由に1行で書いてもらい集めます。そして一言、「すごいなあ!」「大変だったね。」などと、短くてよいので書き添えます。これを毎日続けると、子どもは先生と1日1回は言葉を交わした気持ちになります。また、書きっぷりや内容から、子どもの様子の変化に気づき、声をかけてみることもできます。実際、これで大事になる前に事件を防止できたことが何回もありました。今はタブレット端末があるので、紙でやり取りするより効率的にできるようになり、低学年の児童でもタブレット入力でのや全国各地の先生がたのアイデアを詰め込んだ「共育のツボ」。「ともにはぐくむ」をテーマに、子どもたちとの関わり方や学級経営の工夫、先生ならではのお悩みとその解決法など、日々奮闘する先生がたの情報共有の場となるようなページをお届けします。りとりが可能かと思います。 最後に保護者への適時・適切な連絡です。例えば、子どもが学校でけがをしたら、まずは必ず養護教諭に見せること。一見軽微でも、あとで骨折などが見つかることもあります。そしてすり傷程度でも、必ず子どもが帰宅する前に保護者に電話し、お詫びと状況の説明をします。留守番電話でもかまいません。着信履歴を残すだけでも、保護者の受け止めは変わります。 「自分が大切にされている」と感じると、人は他人に優しくなれますし、学級全体にも穏やかな空気が流れます。学級経営の基礎は子ども一人一人とのきずなだと思います。他にも方法はたくさんあります。まずはできそうなところから挑戦してみてください。小学校外国語科検定教科書『ONE WORLD Smiles』(教育出版)執筆者(共同)。東京都教職員研修センター英語研修講師の他、各地の小・中学校で研修講師を務める。よしむらたつゆき28ベテランの先生は失敗事例の宝庫です。失敗が多いほどスキルは上がります。失敗談をいっぱい生かしてください。かく言う私も……。きずなを深める学級経営吉村 達之三鷹の森学園三鷹市立高山小学校校長

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