未来を拓く授業デザイン〜学びに向かう力を身につける〜教科の視点 書写ー9特集進めながら、あるいは準備をしながら、遅い子も終わり次第、次の活動に入っていけるようにすると、ただ待つだけの時間はなくなります。「学習の進め方⑥・⑦」 配分時間:10分 練習したあと、「まとめ書き」が書けたら評価をします。「ためし書き」と比べ、さらにお互いよくなったところを見つけ合うことで、この1時間の成長を実感させたいものです。しかし、これで終わりではありません。 今日書いた文字は「林」でも、学ぶべき内容は「へんとつくりの組み立て方」です。「林」を正しく整えて書くための知識と技能を、他の文字にも生かす、つまり文字を整えて書くための原理・原則として身につけていかなければなりません。そのためには学んだことを子ども自身で言語化することが必要です。そしてその知識や技能を使い、「木へん」だけでなく、さまざまな「へんのある文字」を整えて書くことができるという発見や経験を経て、文字の組み立て方の原理・原則が構築され、日常に生かすことのできる力となっていくのです。 しかし、これらを1時間の授業で終えるのは難しいので、単元の中でまとめて振り返りをしたり、他の文字を探して書いてみたりという活動を取り入れていきましょう。慣れないうちは、教師の方で的確な言葉を示して振り返りつつ、学習した書写用語も取り入れて子どもたちの実感をともなう言葉で認知していけるように育んでいきましょう。 3年生以上の学年で毛筆学習が始まります。「毛筆学習をする意味はどこにあるのか」ということについても、教師のみではなく、子どもたち自身が理解していくことが望まれます。毛筆で上手に書くことがゴールではありません。硬筆で整えて書くための学習活動であると考えると、必要以上に上達を求めなくてもよいのです。「いくらやっても下手だ」と毛筆で書くたびにやる気が失せてしまうことも、ここをきちんと理解させておくことで防げるかもしれません。 一方で、日本の伝統文化の一つとして、毛筆による書字文化は大切にしたいものです。「書き初め」もその一つですが、私たちの身近なところにはさまざまな毛筆による文字が生きています。多様な文字に触れることで、さらに文字を書くことに楽図3 教育出版『小学 書写 四年』p.3「目次 下段」図4 教育出版『小学 書写 四年』p.28「けい老の日のはがき」しさを感じ、進んで文字を書こうとする子どもを育てたいと思います。 目次ページの下段(図3)には、他教科と関連させて学ぶべき内容が示されています。例えば4年生の年間指導計画では「けい老の日のはがき」(図4)は9月に設定されています。しかし、そのときには出さないはがきを書いても学んでよかったとは感じられないでしょう。他の学習活動のなかで、はがきを書くことが想定されているなら、そのときにこの教材を使って学び、それを生かしてはがきを書けば、生活に直結した学びになります。学んだことが役に立ったという経験が、次の学びへの原動力になり、もっと書いてみたいと文字に興味をもって書くようになっていく。そんな書写指導を目ざしてみませんか。書いて終わりではない毛筆で学ぶ意味は?日常に生きる力に
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