特集の視点教科輝いて生きるための自分デザイン教科の視点社会ー 日々の学習の中で、子どもがいきいきと学びに向かうのはどんな時でしょうか。答えは多様にあると思いますが、私は「自分の好きなことを、好きな方法で学べる時」だと考えます。社会科に置きかえると、「自分の学習問題」を「自分の思い描く調べ方とまとめ方」で追究しながら、自ら社会科の学習を創り出していく時だといえます。 右の図をご覧ください。一般的に学習活動には、学習内容と学習方法という2つの側面があります。一般的な一斉授業では、教師がこの両面をコントロールしていることになり、図に従えばAにあてはまります。一方で、学習者である子どもが学習内容と学習方法の両面を選択・決定する場合はDにあてはまります。ここにおいて、子どもの主体性が最大限に発揮され、子どもがいきいきと学びに向かう姿が見られます。 そこで、主体的・自力的に問題解決に取り組む姿を具現する「子ども追究型の社会科」実践をご紹介します。 令和4年度の佐渡市立真野小学校5年生で行った実践です。単元の流れは次のとおりです。時12学習活動の2つの側面[1]10活動内容日本で起こった過去の自然災害を調べたり、自然災害と国土の自然環境との関係について考えたりして、学習問題をつくろう。自然災害が多い日本では、大規模な自然災害から暮らしを守るために、どのような取り組みをしているのだろう。3地震の対策について調査し、まとめよう。4津波の対策について調査し、まとめよう。5風水害や雪害、火山災害の対策について調査し、6単元の学習問題の結論を考えよう。まとめよう。(1)ポイントは「子どもによる選択・決定」 子どもが学習内容と学習方法の両面を選択・決定する場を設定するために、単元の学習問題設定後の3・4・5時間めに着目します。通常は、「地震」「津波」「風水害・雪害・火山災害」の事例を順に調べていきますが、自然災害の事例そのものを、子どもが選択できるように工夫します。すると、「○○から暮らしを守るために、どのような対策が進められているのだろうか」の○○の部分を子どもが決めることができます。 子ども追究型の展開にシフトチェンジするためには、「子どもによる選択・決定」という視点が大切になります。「自分は○○を調べたい!」という意欲が、追究活動の原動力になるからです。さらに、調べ方やまとめ方などの追究方法の決定権も子ども自身に選択・決定させることで、子どもの追究意欲はより高まります。(2)子どもが学習内容を選び、決定する 具体的には、第3時で地震について調べたあと、第4時で右のスライドを示し、自然災害の事例を子どもが選択できるようにしました。すると、子どもから「津波」や「風水害」「雪害」「火山災害」の事例が勢いよく出され、「自分の学習問題」が立ち上がりました。 続いて学習問題に対する予想を問うと、雪害対策では、「車のガソリンを活用して、目の前の吹雪を溶かすのではないか」といったほほえましい予想や、「屋根を工夫して雪を落としやすくしているのではないか」といった実際にありそうな予想が出されました。それぞれの災害対策の予想が出そろうと、予想の正誤に興味・関心を抱き始めた子どもから、「調べてみたい!」という声が次々とあがってきました。追究意欲の表れです。このような姿を見取り、次の学習方法の選択へ進みました。(3)子どもが学習方法を選び、決定する 子ども発の「調べたい」という声を受け止めたあと、「調べ方やまとめ方をどうしたいか」と問いました。子どもはせきを切ったように「教科書を見る」「資料集を見る」「タブレットでインターネット検索をする」「図書室に行って本で調べる」「専門家はじめに ~子どもがいきいきと学びに向かう時~授業の実際5年生「自然災害とともに生きる」「子ども追究型の社会科」授業を目ざして ~学習内容と学習方法を子どもに委ねる~新潟県佐渡市立真野小学校教諭 椎しい井い 慎しん太た郎ろう社会
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