特集輝いて生きるための自分デザイン教科の視点 社会に電話をする」と学習方法のアイデアを発表しました。また「友達と協力して調べたい」「一人でとことん調べたい」と、学習形態の発想も出されました。さらに「スライドでまとめたい」「ノートにまとめたい」と、調査結果のまとめ方のアイデアも出されました。 このようにして、全ての子どもが「自分の学習問題」と「学習方法」を決めることができました。(4)思い描いた方法で追究する 「何をどのように調べるか」を決めた子どもたちは、このあとの勢いが違います。右写真のペアはいつも複数人A児で調べることに価値を見いだしている子どもです。調べる対象が「雪害対策」であることを確認したあと、それぞれの得意な方法で追究をスタートさせました。ここからはA児の追究の実際を述べていきます。 A児はまず「図書室に行っていいですか」と確認したあと、勢いよく教室を飛び出して図書室に向かいました。数分して、「雪害対策の本がありました!」と目を輝かせて戻って来ると、すぐに読み始め、雪害対策の一環として屋根の形を工夫する事実を見つけ、「あった! あった! 予想合ってる!」とペアのB児に報告します。 A児の追究活動と並行して、B児も自分の思い描いた方法で追究を進めていました。B児は、1人1台端末を活用してインターネット検索をしたり、「NHK for School」などの動画を視聴したりしながら、雪害対策の情報を収集しました。その結果、冬の豪雪に備えた対策をしている企業の取り組みを知ることができました。 この間およそ15分。A児もB児もそれぞれのペースで個別に追究をしつつ、雪害対策を調べるという同じ目的に向かって協働的に取り組んでいます。ときに立ち止まって調査結果を共有し、ときに自分の思い描いた方法で追究を再開します。自らの学びを調整しながら、それぞれが「自分の学習問題」を「自分の思い描く調べ方とまとめ方」で追究する主体的な学びが繰り広げられていました。このように、「子ども追究型の授業」が軌道に乗ると、「教師がコントロールする授業」から離脱していきます。 ここで、A児の追究活動が加速します。「雪害対策についてもっと詳しく知りたいので、専門家に電話をかけることはできますか」と相談しに来ました。よりよい課題解決に向けて、学習方法を主体的に調整する姿です。もしもここで教師が断ってし【引用文献】・[1]加藤幸次:『生きる力を育てる新しい授業No.3 意欲を高める授業』教育開発研究所(1997)まったら、自走する子どもの伴走者として失格です。手元にあったスマートフォンをすぐに取り出し、以前お世話になった新潟県庁危機対策課のかたに電話をかけました(右写真)。10分の聞き取り調査の結果、「消雪パイプ」や「命綱をつける取り組み」などの情報を収集することができました。 調査時間が残りわずかになったところで、A児とB児はお互いの調査結果を確認し合いながら、情報をMicrosoft PowerPointを使ってスライドにまとめました。受け手の分かりやすさにつながるように、情報をシンプルに編集しようと心がけていました(下のスライド)。 このようにしてA児は、B児と協働しながら本時の内容を問題解決的に追究していきました。調査にあてた時間はおよそ60分間(第4~5時)。特筆すべきは、この間に教師の支援をほぼ受けることなく、自ら学びを進めたことです。これを支えたのは、学習内容と学習方法を選択・決定させ、子どもを信じて委ねたことにあります。そして、今までの社会科授業を通して培った調査力を発揮しながら、主体的・自力的に雪害対策を追究する姿が見られました。この姿こそ、子どもがいきいきと学びに向かう姿であると考えます。 子どもたちが自分なりの追究の道筋を見つけ、自らの手で実行に移す、つまり子どもたち自身の手による社会科を創り出していくことができる時、一人一人の子どもが輝くと考えます。 私たちは、「教えよう」「分からせよう」とする前に、まず「子ども自身による主体的な学習の尊重と促進」を大切にしなければなりません。そのための一手法として、「学習内容と学習方法を子どもに委ね、その子なりの追究の道筋を歩ませる『子ども追究型の社会科』」をご紹介しました。本稿が、先生がたの授業づくりのお役に立てれば幸いです。11B児ーおわりに
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