教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (小学校版)
13/36

特集輝いて生きるための自分デザイン教科の視点 算数 子どもたちに問題を投げかけると、A児が右の図をかきながら「僕は5対5がいいと思う! だって半分だから。1対1で対決ができるもん」と発言しました。A児は走ることが苦手なため、自分が楽しむためには鬼の数が5人必要だと考えたと予想されます。この発言に対して、「鬼と逃げる人の数が同じだとすぐ捕まっちゃうよ」「5人とか半分にできないときは、どうするの?」と意見が続きます。そこで、教師から「じゃあ、みんなは鬼が何人ならちょうどいいと思うの?」と発問し、自力解決に入りました。 ページ下部で提示しているように、子どもたちからはさまざまな考えがあがりました。 子どもたちは、鬼の数は2~5人がよいと考えていますが、同じ鬼の数でも、その理由や数学的なアイデアはさまざまでした。 集団検討では、一人一人が考えた鬼の数とその理由を話し合う中で、「対応の考え」や「重みづけの考え」など、子どもが働かせた数学的な見方・考え方を顕在化させ、それぞれのよさを共有しました。▼子どもたちのノートとそこからみえた数学的なアイデア 本実践では、一人一人が輝く算数授業を構想するにあたり、子どもの日常生活を題材にした授業を構想し実践しました。氷鬼の鬼決めは、子どもにとって自分事になる問題であり、切実な問いだったからこそ、一人一人が自分らしい学びを表出できたと考えています。実際に氷鬼をする場面を想定して考える姿や、自分や友達の走る速さに着目して考える姿などが見られたからです。今後は、日常事象を数学化するうえで、何を捨象し、どの程度算数の内容を扱うかをさらに検討していきたいと考えています。【参考文献】・西村圭一:『数学的モデル化を遂行する力を育成する教材開発とその実践に関する研究』東洋館出版社(2012) G児は、分母を参加人数(全体)、分子を鬼の数(部分)とし、潜在的にもっている割合的な見方で考えています。G児は、氷鬼にあまり参加しないため、数の世界で俯瞰的に考えていると予想されます。13・鬼と逃げる人の数の差に着目する・逃げる人視点で友達を助ける役に着目して考える・鬼視点で捕まえる役や見張る役に着目して考える・走る速さによって、場合分けや重みづけをする・参加人数に対する鬼の数を割合的にみる B児は、参加人数と鬼と逃げる人の関係を式に表して考えています。その後、参加人数を増やした場合の鬼の数についてさらに探究していました。 D児も、対応の考えを使っていますが、C児とは理由が異なります。D児は、鬼を好んでするため、鬼の視点に立ち、逃げる人を見張る役をふまえた鬼の数を考えています。 F児は、対応の考えを発展させ、鬼の走る速さで重みづけをして考えています。走る速さが速い人(青)は3人、遅い人(赤)は1人捕まえることを想定しています。 C児は、鬼と逃げる人を1対1対応させながら考え、1対1対応ができなかった4人が逃げることを想定しています。C児は、氷鬼で逃げる役を好んでするため、逃げる人の数に着目して考えたと予想されます。 E児も、対応の考えを使っていますが、鬼の走る速さに着目して考えているところが異なります。走る速さが遅い場合は4人、速い場合は3人とし、すぐに全員が捕まらないような鬼の数を考えています。(3)鬼の決め方の変化 本実践後、氷鬼の鬼決めの場面において、鬼の数やその決め方に変化がありました。実践前は、鬼の数を感覚的に判断し、じゃんけんで決めていました。しかし、実践後は、鬼と逃げる人がそれぞれ1列に並び、鬼の希望者の数と走る速さを考慮し、話し合いで鬼を決めようとする姿が見られました。例えば、「足が速いから鬼は2人でもいいと思う」「走るのが苦手だから、もう少し鬼を増やしてくれない?」などの話し合いが行われています。日常生活の問題を算数で解決し、自分らしい学びが表出された1つの事例といえます。ーおわりに

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る