教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (小学校版)
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特集の視点教科輝いて生きるための自分デザイン教科の視点生活ー  生活科は、具体的な活動や体験を通して、学校や家庭、地域の人々や自然を「自分との関わり」でとらえ、気付きの質を高めることによって、自立し生活を豊かにしていくことを目ざす教科です。創設以来、学習指導要領の目標も、書きぶりの変容はあるものの、そのことは一貫しています。子どもたちが思いや願いをもって具体的な活動や体験に没頭し、繰り返し対象に関わることがなにより重要な学び方となります。だからこそ、子どもたち一人一人の『関わり』やその中での『気付き』、そして『こだわり』が輝くように支援したいものです。 ところで、GIGAスクール構想により、一人一台の端末が配布され、高速通信ネットワークやクラウドが活用できる環境が各学校にほぼ整ってきました。ただ、生活科は具体的な活動や体験を重視する教科であるため、ときおり「デジタル機器などのICT活用とは親和性が低いのではないか」「自然や人との直接的なふれあいやそこでの豊かな気付きがおろそかになるのではないか」などの懸念の声が聞こえてくることがあります。はたしてそうでしょうか。もちろん、端末上で操作ばかりするような活動をするのだとしたら、生活科の理念から外れています。しかし、うまく活用すれば、子どもたちの活動をむしろ豊かにする大変便利なものです。低学年として端末操作の技能がまだ十分でなくとも、写真や動画撮影、手書き入力、その保存、共有程度であれば、手順を覚えてすぐに活用できるようになります(もちろん多少の個人差はありますが)。それだけでも、子どもたちの便利な文房具として、また教師の支援としてさまざまに活かすことができるのです。後に具体的な活動を想定して例示していきますが、大枠としては、以下のような活用ができます。 つまりICTはうまく利用することによって、子どもたちの具体的な活動や体験における『関わり』『気付き』『こだわり』の輝きを残したり、それを伝え合ったりすることを支える道具になりうるのです。 では、具体的な活動をもとに考えてみましょう。 学習指導要領の内容「⑹自然や物を使った遊び」では、ゴムを使って、おもちゃの一部や輪ゴムを飛ばして遊ぶ活動が実践されることがあります。子どもたちが没頭して対象(ゴムやそれを飛ばすための材料や用具)と繰り返し関わり、気付きを得、こだわりをもって活動していくためには、教師が環境を整備することが大切な支援となります。いろいろな大きさや太さのゴム、それを飛ばすことに使えそうな割りばしや木の棒などの材料をなるべく多様かつ大量に準備しましょう。簡単なゴムを使ったおもちゃの作り方なども、子どもたちがいつでも自分の端末を使って、見たいときに動画で見られるようにしておくのもよいですね。また、心おきなく飛ばせる場を提供し、安全に遊ぶための注意事項を確認しましょう。 さて、そのような環境の中で見られる子どもたちの活動は実に愉快です。どちらが遠くに飛ばせるかの競争を始める子どもたち。より遠くに飛ばすために、ゴムの種類を変える子どもたち。太いゴムが飛ぶと思って自信満々で飛ばしたのに、予想外に飛ばずに首をかしげる子ども。それならば小さければよいのだと思い、小さなゴムを使ったのに、やはりあまり飛ばずにまた首をかしげる子ども。伸ばし方の問題なのかと、動作を変える子ども。ゴムを飛ばすおもちゃの大きさや形の改造をはじめる子ども……。さまざまな活動が起こり、その中でゴムの力16・・「具体的な活動や体験の中で出会った人、見つけたもの」「作ったもの」「驚いたもの」などを、子ども自身が言葉や絵だけでなく、写真や動画でも記録することができる。・・クラウド環境により、教室でそれらを友達や教師と簡単に共有でき、伝え合いや評価に活かせる。・・手書き機能で気付きや振り返りを写真や動画とともに保存できる。紙やノートに記述することを大切にするのもよい。その場合は、必要に応じてその紙やノートを撮影すれば、画像としてクラウド上にもかさばらずに保存することができる。生活科の本質であり続けるものICTは豊かな体験を阻害するものではないゴムを飛ばして遊ぶ子どもたちが「わたしの」関わり、気付き、こだわりが輝く生活科のために〜ICT「も」便利に活いかす〜東京学芸大学准教授 大おお村むら 龍りょう太た郎ろう生活

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