教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (小学校版)
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特集輝いて生きるための自分デザイン教科の視点 生活や性質に対する気付きの質が高まっていきます。まさに自分の生活(遊びという大切な生活行為)を工夫し、そのおもしろさや不思議さに気付き、楽しんでいる姿です。 一見、ICTとは無縁のように思える活動ですが、ここでもICTは大いに役立ちます。例えば以下のように活用することができます。 このように、子どもたちのゴムやゴムを使ったおもちゃへの『関わり』『気付き』『こだわり』を記録・共有することで、「わたし」の輝きを振り返ったり伝え合ったりする喜びを味わうことにつなげたいものです。 学習指導要領の内容「⑺動植物の飼育・栽培」では、ほとんどの学校で1年生はアサガオを育てる実践が行われているのではないでしょうか。一人一鉢のアサガオを育てる……それを「作業」のようにやるのはとてももったいなく、また生活科の理念から外れることになります。全国には、子どもたちが「わたしのアサガオ」にこだわって関わることができるように、多様な活動の工夫や環境を準備する素敵な実践があります。 例えば、「あなたのアサガオの種さんが好きそうな鉢はどれかな。選んでみよう」といって、複数の色や形の鉢を準備している実践があります。みんな同じ栽培セットの鉢を使うことも多いですが、学校で多様かつ多数の鉢を一度準備し、次の年も下の学年に譲っていけば、可能な実践です。支柱も同様です。つるが伸びてきたら機械的に支柱を立てさせるのではなく、「つるが伸びて踏まれそうだよ。かわいそう」と子どもが思って声をあげるから、教師は支柱の存在を知らせるのです。支柱も複数の色や手ざわりのものを用意しておき、「あなたのアサガオさんがつかまりたそうな支柱を選んでいいよ」と伝えれば、子どもは自己決定していきます。「わたしのアサガオが喜びそうな鉢」「わたしのアサガオの種から出た双葉の形」「わたしのアサガオが好きそうな支柱」「友達のアサガオとはよく見ると違う葉の大きさ」「はじめて咲いたわたしのアサガオの花」「今日は3つ咲いた」「今日はたくさん咲いた」「ちょっとずつ茶色になってきた」……それらは「わたしのアサガオの成長物語」であり、「わたしのお世話物語」です。子どもたちはアサガオとの関わりの中で、たくさんの思いや願い、気付きをつぶやき、また文字で表現するでしょう。スケッチをするのも素敵です。そのようにして、他の誰でもない「わたし」が、「わたしのアサガオ」へのこだわりを高めることによって、それがかけがえのない生命をもっていることや成長していることを実感していきます。 このような植物を育てる実践においても、ICTは子どもたちの活動や振り返りを豊かにする道具になります。例えば以下のような活用です。 このように、「わたし」や「わたしのアサガオ」を振り返ったり、家族や教師にその『関わり』『気付き』『こだわり』を伝えたりすることにICTを活かし、育てることや学びの喜びを味わってほしいものです。 ICT「も」活用した二つの事例を紹介しました。ICTは豊かな活動や体験を阻害するものではありません。使い方次第で、子ども一人一人が自身の学びを豊かにするために役立つ道具になります。各現場で工夫し、大いに活用されることで生活科の輝きがさらに増すことを願っています。17・・ゴムの飛ばし方やゴムを使ったおもちゃの変化・改造の過程を写真や動画として記録しておくと、「わたしの」活動や作成物の発展、飛ばした距離の伸びなどを軌跡として視覚的に残すことができる。・・活動の最中に、直接遊びを見せ合いながら伝え合うだけでなく、活動後の教室での振り返りにおいても、上記のような写真や動画を共有すれば、視覚的に示しながらゴムの性質についての気付きを豊かに伝え合うことができる。・・写真や動画だけでなく、そのときどきの気付きや振り返りを手書き入力したり、紙に書いたものを撮影したりして一緒に保存すれば、「わたしのゴムとばし」の活動物語がまとめられ、達成感や成長感を味わうことにつながる。・・教師もそれらを見取ることで、活動中には全員にできなかった評価や賞賛を行うことができる。・・「小さな種」「選んだ鉢」「種を植えた日のまっさらな土」「はじめての双葉」「ちょっと元気がない気がする日」など、「わたしのアサガオ」の成長過程(すなわち「わたしが育てた過程」)をそのつど撮影し、アルバムに残していくことができる。それは、アサガオの成長への気付きとともに、自分がどのように関わってきたかを、長期的なスパンで振り返りやすくする。また、端末を持ち帰れば、家族に見せて、自分の気付きや驚き、心配なことなども伝えることができる。・・ノートや用紙にスケッチでアサガオの様子を表現したり、文章で思いや願い、気付きを記述したりするのも、もちろん子どもの表現として大切で素敵な活動である。そのような紙への記述やスケッチも撮影してアサガオの写真と一緒に保存しておけば、多様な記録からさまざまなことを想起し、振り返りができる。ー「わたしのアサガオ」を育てる中で

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