特集輝いて生きるための自分デザイン教科の視点 道徳・・教師も一緒に給食の配膳や掃除を行い、うまくできない子どものサポートをするとともに、よくがんばっている子どもに感謝の言葉を伝える。・・いけないこと(例えばいじめなど)は、毅然とした態度で接し、すぐにやめさせる。・・弱い立場に立たされている子どもや要領よく立ち回れない子どもがいじめの対象になっていないか注意深く観察し、子どもを取り巻く環境に敏感であること。・・大勢の子どもたちがともに過ごす学級で、人間関係上のトラブルが発生することは自然なことだと考え、実態に応じたソーシャルスキルトレーニングや構成的グループエンカウンターを行う。 教師が子どもたちと一緒になって学級生活を送ることで、「先生はきちんと私たちのことを見ていてくれる……」と子どもたちは安心するのです。(2)正義感を大切にする学級経営 子どもに安心感を与えると同時に、正義感を大切にする学級経営を行う必要があります。学校生活の中で教師は、子どもたちのよい姿だけでなくよくない姿を目にすることもあります。そんなときには、その場で正しい指導をする必要があります。 いじめに気づいたら、教師は真っ先に被害者を救い、その子どもの心と体の安全を守ります。また、継続的な指導を行い、いじめ加害者の心に働きかけることが大切です。そして、「いじめはまちがっている」と堂々と言える学級経営をしていきましょう。正義感を大切にする学級は、全ての子どもが大切にされる学級なのです。その結果、子どもたちは安心して自分の意見や考えを述べることができるようになります。また、子どもと向き合う教師を子どもたちは信頼します。ひいては、道徳授業で自分の生き方について真剣に考えるようになるのです。(3)質の高い道徳授業(考え、議論する道徳) 道徳科が教科となって5年が過ぎましたが、考え、議論する道徳の実践はどれくらい進展したでしょうか? ここでは、教育出版の教科書(2年)でも掲載している『およげないりすさん』(B 友情、信頼)の授業事例をとおして、考え、議論する道徳授業を進めるコツについて考えます。【あらすじ】かめさんとあひるさんと白鳥さんとりすさんは仲のよい友達で、いつも一緒に遊んでいた。ある日、池の中の島で遊ぶことになった。かめさんとあひるさんと白鳥さんは、泳いで島へ行くことになったが、りすさんは「泳げないから」と、一人取り残された。島に着いたかめさんたちは、いつもは楽しいのに今日はちっとも楽しくないことに気がついた。 ここでの問題は、「取り残されたりすさんは、つらい思いをしているだろう。泣いているかもしれない」「島で遊んでいるかめさんたちはりすさんのことが気になって、遊んでいても楽しくない」などがあげられます。そこで、中心発問を「4人はもう友達には戻れないのでしょうか? 全員が笑顔になるためには、どうしたらいいでしょう?」としました。 このような発問は、子どもたちが生きるうえで出会う身近な問題の一つであるため、主体的に考えたくなる内容、つまり必然性のある発問といえます。また、「どうすれば仲直りでき、さらなる友情を育むことができるだろう」「自分ならどう行動するだろう」という発問は、答えが一つではないため、自分の経験をもとに考え、仲間と議論することにより、対話的で深い学びに発展します。さらに、「本当の友情とは何か」について探究できるため、ねらいである道徳的諸価値(本時は「友情」)の理解を深めることにもつながっていきます。 ここでは多様な意見が出されるため、ある程度自由に発言させます。初めはばらばらだった意見も、ある程度議論が進むといくつかに集約されます。教師はそれを整理しながら板書していきます。子どもたちが考えた解決策1.3人(かめさん・あひるさん・白鳥さん)は、りすさんに許してもらえるように「ごめんね」と言う。 さらに、「私だったら、りすさんに泳ぎを教えてあげる。諦めなかったら少しずつ泳げるようになるからがんばってほしい。」と語る子どももいました。どの意見も、友情についての考えを深めながら道徳的課題を解決しようとしているすばらしい姿です。 その後、子どもたちの考えた解決策をロールプレイしました。4人のうち、どの役になってもよいこととし、上述の1と2を順にやってみながら、4人全員で島にたどり着いたとき、子どもたちはうれしそうに万歳をしていました。問題解決的な発問は一つの発問でありながら、道徳性の育成と道徳的実践意欲を高めることができるとても有効な発問といえます。 このように、考え、議論する道徳は、主体的・対話的で深い学びの視点から授業改善された、質の高い道徳授業なのです。 全国に数多くいる、子どもと向き合う教師が、子どもたちと一緒になって考え、議論するすばらしい道徳授業を実践されることを、心より願っております。232.4人で島の公園に行く方法があるはず。 (りすさんをかめさんや白鳥さんの背中に乗せる。そのとき、りすさんが落ちないように、ゆっくり泳いでみんなで守る。)ー
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