教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (小学校版)
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連載デジタル時代の学び問題解決のための学習過程(シンキング・サイクル)の例 高次な資質・能力に関する指導法にスタンダードはないと申しあげたものの、基本的な理論や考え方はあります。この共通認識は必要です。若手もベテランも、生涯にわたって能動的に学び続けるであるとか、子ども一人一人を主語にするであるとか、学校教育目標のような大きな目標は共有し、指導法の基本的な理論や考え方を学ぶ。そのうえで、教師一人一人の得意を生かして指導法を磨いていくことになるのではないでしょうか。 そのために学習指導要領や同解説でいえば、「学習過程」「見方・考え方」「学習の基盤となる資質・能力」といった考え方が決定的に重要になります。これらは教科固有に示されていることもありますが、汎用的に日常生活の中でも発揮できるように身につけておくことが望まれます。以下に、特に「学習過程」を中心に解説します。 『学習指導要領(平成29年告示)解説』の各教科等においては、数多くの学習過程が示されています。しかし、各教科等いずれの学習過程も、基本構造は「問題解決のための学習過程」です。まずこれを理解すれば十分です。 「問題解決のための学習過程」として、最も有名なのは「探究的な学習の過程」です。「学習過程」を「指導過程」とはいっていないことが重要です。「指導」ではなく「学習」であるから、主語は子どもになる。教室に35人いれば35通りの学習過程が、子ども一人一人のペースで動き出すのです。例えば、「探究的な学習の過程」に基づきつつも、「今から情報の収集をします。」「続いて整理・分析をします。」と教師が一つ一つ指示をしていくのでは、「学習過程」ではなく「指導過程」になってしまいます。これこそ一斉指導であり、無駄な待ち時間も発生し、いくら時間があっても足りなくなります。 そうではなく、子どもが自分で学習を進めていけるようにしていくのです。高次な資質・能力の育成をするのですから、教える、つまり、いくら子どもにインプットだけをしてもできるようにはなりません。子ども自身が、自分ごととしてアウトプットを繰り返していくことで育まれていくのです。 結果、それぞれが得意な方法などを用いて、自分なりに学習過程を回しながら問題解決をしていく。つまりこれが「個別最適な学び」の基本的な考え方になります。 「探究的な学習の過程」であれば、流れはご存じのとおり「課題の設定」→「情報の収集」→「整理・分析」→「まとめ・表現」です。ここに協働というステップがないことも重要といえるでしょう。つまり「今から班で話し合いなさい。」と教師が指示し、みんなで行う一斉指導における協働は、学習過程にはなじまないのです。基本的には、問題は子ども個々にあり、その問題を解決しようとする際に、子ども個々の必要感に応じて協働的な活動が行われる。つまり、その際の協働的な活動の意味は、「整理・分析」のステップであれば、「整理・分析」をよりよくするために子ども自らが行うところにあります。  子ども一人一人が問題解決のために学習過程を回していく、すなわち子ども一人一人が個別最適に問題解決をしていく。その個々の問題をよりよく解決するために「協働的な学び」も行われます。 このように考えていけば「『個別最適な学び』と『協働的な学び』の一体的な充実」も理解しやすいでしょう。結局は、職員室やオフィス等で行われる社会人の問題解決活動と相似形なのです。25子ども一人一人が「学習過程」を回す子ども一人一人が個別の問題を解決するために協働する

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