教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (小学校版)
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必見!! 合点!! 著作権!   「引用」という言葉は、広くは、自分の文章の内容を補足したり証拠立てたりするために、他の人の文章などから一部分を抜粋して使う場合によく使われます。しかし著作権法では、著作者の許諾を得ずに著作物を使える「権利制限」の一つとして定められ(第32条)、以下の条件を守る必要があります。①公表された著作物であること。*個人で読むだけの日記や私信は使えません。*文章以外に、絵や写真、図表なども使えます。②自分の考えを補完するための「必然性」があるなどの「公正な慣行」に合致した使い方であること。*「どんな例でもあてはまる」ではなく、自分の考えを補完するものを使いましょう。③報道、批評、研究などのための、自分の考えが主で、他の人の著作物はその一部分を占める「従」という、「正当な範囲内」での利用であること。   結論から申しあげると、それは「利用する人の必要性と判断」によります。以下の例のように、上記①~⑤の条件から外れないように気をつけましょう。*文章の合間に好きな絵を挿入する。→「好き」というだけでは「必然性」に乏しいと考えられます。 (上記②に該当)*引用した文のあとに、「自分も同じように感じます」ぐらいの意見しか書いていない。→自分の意見が内容上、分量上の割合の大部分を占めるようにします。(上記③に該当)*短歌をたくさん並べて紹介する。→短歌や俳句は、一つの文章の中にたくさんの作品を引用することはできません。(上記③に該当)*出所を別の文章に載せる。→出所は、できるだけ引用箇所の近く、少なくとも同じ文章の中に示します。(上記⑤に該当)*使えるのは、長文であれば、原文の一部分です。*部分だけ使うことで、かえって引用した意味がわからなくなるようなもの、例えば、詩や短歌や俳句、絵や写真などでは、その全部を使うことができます。④引用する部分が他の部分と明確に区別されること。*他の行から2字程度下げて書く、「 」や囲みで括る、前後を1行空けるなどして示します。⑤引用する著作物の「出所」を明示すること。*書名(作品名)、著者名、出版社名、発行年などを、引用箇所や書いた文章の最後にまとめるなどして示します。さらに厳密さが求められる場合は、章段、ページ数なども示します。*インターネットなど、出所の情報が変わる可能性のあるものは、サイト名やURLのほか、自分が閲覧した年月日も記します。ここで、「引用」できる意味を考えてみましょう。例えば、ある人の意見に反対する文章を書くときに、その人の著作物を「自分の意見に異を唱えるなら使わせない」となれば、文章の内容は制約され、健全な議論を行うことの妨げになりかねません。一方、無制限に使えてしまうと、「もとの著作物を買わなくてもすむ」という事態にもなりかねません。また、著作権法で罪に問われるのは、原則として、権利者本人が権利侵害されたと申し立てることによります。利用する側は「条件を守って引用した」と思っても、それを見た著作者が「条件を逸脱している」と考えることもありえます。「引用」は、著作権の「権利制限」の中でも、私たちに最も身近なものの一つですが、条件に照らして慎重に取り扱うようにしましょう。○参考:学校における教育活動と著作権(文化庁)本記事が、学校を中心に教育の場における著作物の利用について、先生がたのご判断の一助になれば幸いです。次号では、学校行事などでの著作物の利用について考えてみたいと思います。※本記事中、条文番号は著作権法のものを示しています。33「引用」として扱えば、小説や論文などの著作物を自由に使ってもよいのですか?「引用」が正しいか、そうではないかは、  どのように判断すればよいのですか?

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