教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (小学校版)
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5全部教師が前もって調べて準備するんですよ。そうやって子どもたちの学びにつき合うことによって、結局、いちばん成長したのは教師であるという関係ができないと、いい教育にはならないと思います。教師が自分の知識を切り売りする今までのやり方では、教えることによって教師が豊かになるということはあまりありませんでした。しかしこれからの教育は違います。 教育する者がいちばん教育されるという関係になった時、世の中はうまく回りだすと思います。教育する者が己の知識を切り売りして、やればやるほどやせ細っていくのは本当の教育ではない気がします。若い世代のエネルギーにふれて、それを上手に形にしてあげるために、教師自身が学び続けなければなりません。 だから、この仕事をやっていて本当によかったと教師自身が思えるようにまずなってほしい。教師が調べて考えた答えよりも、子どもたちが自力で編み出した答えのほうがよっぽど深い。子どもってすごいな。子どもから私はたくさん学ばせてもらった。そのように実感できる、互いに学びが循環して教え合う関係性が理想ですね。 これからの時代の教育で、いちばん育つのは実は教師だった、そんな教育を目ざすことが子どもたちにとっても、いちばんありがたい教育なのではないかと思います。汐見 稔幸 しおみとしゆき1947年大阪府生まれ。東京大学名誉教授、白梅学園大学・同短期大学名誉学長、全国保育士養成協議会会長、日本保育学会理事(前会長)。一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事。専門は教育学、教育人間学、保育学、育児学。自身も3人の子どもの育児を経験。保育者による本音の交流雑誌「エデュカーレ」編集長でもある。持続可能性をキーワードとする保育者のための学びの場「ぐうたら村」村長。NHK Eテレ「すくすく子育て」などに出演中。著書に『汐見先生と考える 子ども理解を深める保育のアセスメント』(中央法規出版2023)他、多数。

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