「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点社会ー 特集の視点教科10 写真を見てください。沖縄県の寒緋桜(カンヒザクラ)は、主に1月中旬頃から2月上旬頃に見られます。特に、北西部の本部町にある八重岳は「日本一早い桜まつり」が行われ、毎年、県内外から多くの観光客が訪れる人気スポットです。 この写真は、桜を楽しんでいる観光客の様子です。八重岳入口から頂上まで約7000本の桜が植えられています。 自分たちの県内の特色ある地域について、人々の生活との関連を踏まえて理解するとともに、調査活動、地図帳や各種の具体的資料を通して、必要な情報を調べまとめる技能を身に付けるようにする。 「考える時間」がある授業は、子どもにとって「楽しい」授業です。しかし、子どもたちが「『何を』考えるか」という共通の話題や問題を捉えていなければ、楽しい授業になりません。 そこで「考えたくなる問い」に出合えば、子どもは「自分ごと」となり、学びの主体者になると考えます。試行錯誤しながら追究し、やっと解決できたときは、きっと「楽しい」という思いだけではなく、達成感や成就感も得られることでしょう。 つまり、「『考える時間』を楽しむ授業」とは、「『考えたくなる問い』を追究する子ども主体の授業」であると考えます。これらのことを踏まえ、「考えたくなる問い」を引き出すために大切にしている授業づくりのポイントと実践を紹介します。 このように、「八重岳桜まつり」の様子を数枚のスライドにまとめて紹介したり、解説したりしたあとで、次のように発問しました。 子どもたちは写真を再確認し、桜と道路に注目して「道沿い」という答えを返してきます。そして、すぐさま次のように問い返しました。 子どもたちは「えっ?」という表情になります。そこで予想を立てさせると、「たくさんの観光客をよぶため」「車やバスからでも楽しむことができるため」という考えが出されます。結論からいうと、その予想ははずれです。答えは後ほど詳述します。 「考えたくなる問い」を引き出すには、身近な社会事象を取り上げることが重要です。なぜなら、問いをもつことで「確かめたい」「知りたい」「なぜだろう」など、子どもたちに主体性や必然性が生まれるからです。私は、そのような状態のことを「自分ごと」と呼んでいます。「自分ごと」になった問いは、「考えたくなる問い」といえるでしょう。そうなると、子どもたちは学びの主体者となり、追究し始めていきます。そのため、問題解決能力を育成するには、まず「問題発見能力(=問いを見つける力)」を高めることが重要だと考えます。問題を見つけてもいないのに、解決の糸口を見つけることはできないからです。(2)本質的な問いを引き出す発問 問いを引き出すには、教師のはたらきかけである「発問」が大事です。 では、授業のねらいを達成できるような本質的な問いをどうやって引き出せばよいのでしょうか。そのためには、まず本単元の目標を明確に捉えておく必要があります。教育出版の年間指導計画・評価計画(案)では、以下のようになっています。「考えることは楽しい」と思える社会科の授業をつくるために授業づくりで大切にしているポイント(1)地域教材の活用・開発 4年生「わたしたちの県のまちづくり」の導入場面です。以下のような流れで進めました。どうして道沿いに生えているのですか?桜はどこに生えていますか?「自分ごと」として捉える力を培う授業づくり ~八重岳への想いを教材化して~沖縄県石垣市立登野城小学校教諭 熱あっ田た 脩おさむ社会
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