教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.6 (小学校版)
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「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点算数ー ②③④特集の視点教科12 子どもたちが大人になって向き合わなければならないのは、模範解答のない未知の問題ばかりでしょうから、考える時間を楽しめるというのは大切な資質・能力の一つだと考えています。そして、その力を育むには、日々の授業で、考える時間が楽しいと思える経験を積み重ねていく必要があるはずです。 この「考える」ことと対極にあるのが、「教えられる」ことではないかと思います。教えられることで、その問題は解けるようになるかもしれませんし、子どもにとって、「わかる」や「できる」こと自体に楽しさがあることも事実ですが、考える時間を楽しむには、子ども自身が考えたくなるような授業を構想する必要があります。 では、そのような授業はどのようにデザインしていけばよいのでしょうか。4年生「面積」の実践をもとに、考えていきたいと思います。 4年生「面積」の導入では、右のように16個のレンガで作った花壇の広さを比べる問題が扱われています。私が担任をしているクラスには学級園がなかったので、実際に畑を作って野菜を育てたいと思いました。 そこで、ホームセンターに行くと、板を杭でつなげることで簡易的な花壇や畑を作る、写真1のような道具が売られていま写真 1  畑を作るための道具した。これなら、角の部分をどうつなぐかを気にしなくてすみますし、板を12枚(正方形を作ることができる枚数の設定)使えば、畑として十分な大きさになります。数値設定としても、子どもが実際に作る形を想定して授業を計画しやすいと考えました。 教科書で用いられている題材や数値は、多くの先令和2年度版『小学算数4下』教育出版 p.2生がたにとって授業がしやすいよう、非常によく練られています。ここに、目の前の子どもたちの生活に根ざしたアレンジを加えることができれば、子どもたちの問題解決への必要感も高まりますし、数学的な見方を育てることにもつながると考えています。まずは先生がたが楽しみながら、教科書の紙面をヒントに日常生活を見つめ直してみることが、考える時間を楽しむ授業デザインにつながるのではないかと思います。 単元の導入では、板の代わりに12個の木片を使って、どのような形の畑を作ることができるのかを考える操作活動を設定しました。このような経験が、「面積」の導入で向き合う必要のある、広さを周りの長さで比較しようとする誤概念を乗り越えることにつながると考えたからです。 そして、子どもたちの思考過程を把握するため、作った形をタブレットで写真に撮らせ、順番に集約しました。写真2のように、図形の一部を動かしながら新たな形を考えていくような発想が、周の長さが一定でも広さが変わる場合があることの説明につながります。これまでも操作活動は大切にされてきましたが、ICTを活用することで、その様子を教師が把握したり、子ども自身が振り返ったりして、活動と思考をより効果的に結びつけることができます。他にも、操作そのものをタブレット上で行わせたり、アイディアを共有したりと、さまざまな活用の仕方が考えられますので、あくまでも目的と手段が反転しないよう留意しながら、積極的に活用していきたいと考えています。①写真2 ある子どもが作った図形「考える」こと/「教えられる」こと日常生活から算数探し操作活動とICTの活用「はてな?」と「なるほど!」が生まれる授業づくり成城学園初等学校教諭 工く藤どう 尋のり大ひろ算数

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