「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点理科ー 特集の視点教科14 第3学年では、身近な昆虫を探したり育てたりしながら、成長の過程に着目して、昆虫の育ち方には一定の順序があることなどを学習します。 昆虫の成長の過程を学習する教材にはモンシロチョウがよく用いられます。ところで、先生がたはモンシロチョウを卵から育てた経験はありますか。第3学年を担当したことがない先生は、経験のないかたもいるのではないでしょうか。そこで、本単元を進める際に、児童より一歩先にモンシロチョウを育て始め、モンシロチョウの成長の過程について児童と一緒に考え、楽しみながら教材研究を進めることを提案します。 モンシロチョウを卵から育てて観察するために、モンシロチョウが育つ環境を学校に準備するとよいです。新年度が始まったらキャベツの苗を購入し、学校・学級園やプランターに植えましょう(写真1)。後に、エサのキャベツを用意する手間も減ります。 モンシロチョウの初見日は地域によって異なりますが、苗を植えてしばらくたつとキャベツ畑の周りにモンシロチョウが飛ぶ様子が見られるようになります。そのチャンスを見逃さず、児童を連れてキャベツ畑に行きましょう。 モンシロチョウが腹をキャベツに付ける様子が見られたら学習のスタートです。動画を撮影し、教室で視聴するのもよいでしょう。きっと「モンシロチョウは何をしているのかな?」「卵を産んでいるのかな?」「卵があった!」「卵からどう育っていくのかな?」という発言があるでしょう(写真2)。 さらに、キャベツをよく観察すると、「小さな幼虫や大きな幼虫がいる!」「キャベツに穴が空いているのは幼虫が食べたからかな?」などさまざまな発見があります。児童の気づきや疑問を取り上げ、教師は指導計画を具体化していきます。写真1 キャベツ畑 教師は児童より1週間くらい前に卵を採集し、モンシロチョウを育てます。飼育ケースに入れ、職員室などで育て、教師もチョウの成長を楽しんでみてください。「どのくらいでふ化するのか?」「幼虫はどのように大きくなっていくのか?」「世話の仕方は?」「さなぎになるタイミングは?」指導書などの資料を読むだけでなく、教師も体験しながら教材研究をすることが大切です。教師が感動したり驚いたりしたことを児童にも体験させたいという思いをもって指導計画を立てるとよいです。また、実際に飼育することで、今後の見通しがもちやすくなります。生き物を扱うときは、時間割通りに進められないことも多くあります。教師が一歩先にモンシロチョウを育てることで、成長の過程に合わせた適切な観察のタイミングを計画できるようになります。 本単元は、継続して観察することが大切です。また、責任をもたせるためにも、児童一人一人にモンシロチョウを用意することがおすすめです(写真3)。「卵からチョウになるまで大切に育てよう!」と大きな目標を立て、そのためにはどうすればよいのか、児童が考えられるようにします。自分だけのモンシロチョウがいることで、児童はこの学習を自分事として捉えることができます。ここが理科の問題解決学習のポイントになります。児童一人一人の学びのスピードや興味・関心は異なります。みんな一緒に行う活動でも、「自分はこうしたい」という思いを大事にできる学習環境を可能な限り整写真2 モンシロチョウの産卵チョウを卵から育てたことがありますか?モンシロチョウを学校に呼び寄せる教師は児童より一歩先にモンシロチョウを育てる自分だけのモンシロチョウを育てる教師も児童と一緒に考え、楽しみながらチョウを育てよう~教材研究の進め方~東京都立川市立柏小学校指導教諭 荒あら井い 勉つとむ理科
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