「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点生活ー 特集の視点教科16 多くの学校では、1年生の2学期に、秋の自然物を使って遊んだり、工作をしたりする単元が実施されていると思います。子どもたちがとても楽しそうに活動に取り組む姿が目に浮かぶものの、「どんぐりを拾いに行くよ。」「○○を作るよ。」「お祭りをやるから準備しようね。」と、教師主導で子どもが受け身になってしまうことも少なくないのではないでしょうか。「主体的に活動に取り組んでほしい!」「子どもたちが季節や自然に関心を広げ、それらのよさや楽しさをたくさん味わってほしい!」そんな思いを込め、身近な自然と繰り返し関わる中で、子どもの思いや願いをできるだけ叶えながら、教材や課題にじっくりと向き合える多様な環境の工夫を取り入れて実践を行いました。目ざす子どもの姿や各活動のねらいなどを1年生の担任4人全員で共有し漸進しながら、それぞれの担任のもち味を生かして取り組んできました。子どもたちの充実した生活科の学びのためには、子どもの姿を想定しながらの工夫と準備が必要不可欠です。単元の中で見られた、主体的に取り組む子どもたちの姿も含め、私たちが行った工夫を紹介します。 1つめの工夫は、『なりきり』です。小単元ごとに子どもの様子や発言に沿ってテーマを設定し、子どもたちと一緒に考えながら、さまざまな人になりきって学習を進められるようにしました。子どもたちの発想を生かし、『なりきる』ことで、やる気や意欲が高まり、一人一人が思いや願いをもって主体的に取り組んでいけるようにしました。 はじめは秋のよさや特徴、秋のお宝(秋の自然物)を見つける「秋見つけ隊」、次は秋のお宝やさまざまな材料を使って遊ぶものや飾りを作る「お宝発明博士」、最後はお店を開き秋のよさや楽しさを伝える「店員さん」になりきりました。「秋見つけ隊」と「お宝発明博士」の時にはバッジを作り、意欲を高めてより楽しく取り組めるようにしていきました。 「秋見つけ隊」の時の子どもの様子を紹介します。以前と変わったところを見つけに、夏に遊びに行った公園へ探検しに行きました。落ちているもの、自然物の色についてなどたくさんの変化を見つける子どもたちの様子や発言から、「秋見つけ隊」を設定し隊員として活動するようになりました。隊員の1人が、「どんぐりがもっといっぱいあるところを知っているよ!」と教えてくれたことをきっかけに、「もっと見つけたい!」という活動に対する意欲がさらに高まり、その後もさまざまな種類の秋のお宝を見つけたり、それらを使って遊ぶ中で、秋の素材の“すてき”(よさや特徴)をたくさん見つけたりしました。自然に親しみにくい子どもも、すすんで秋のお宝を見つけるなど、活動に没頭していました。「秋見つけ隊」の隊員として、「~したい!」という思いが子どもたちからあふれ、普段は見落としたりなんとなく過ぎ去ったりしてしまうような自然の小さな変化や特徴、よさなどを自ら探し気付いていく様子が多く見られました。 2つめは、子どもが自ら『情報を収集できる場』の工夫です。「わくわく本棚」「なるほどコーナー」の2つを設置しました。 「わくわく本棚」は、季節やその時の学習に合った本や図鑑などを自由に見られるようにしたコーナーです。さまざまな教科に関連する本を置くようにし、各教科や空き時間、読書の時間などにも自由に使えるようにしました。単元の導入前に本を入れ替えたり、本棚の本を読み聞かせしたりするなど、子どもたちが自然と次の学習への興味関心を高められるように、意図的な活用も行いました。遊ぶものや飾りを作る際には、「わくわく本棚にあった本で作ってみたよ!」と、自分たちですすんで使ったり、友達どうしで本を紹介して、互いに読み比べながら取り組んだりする子どももいました。はじめにみんなで『なりきり』!!知りたいことがここにある!!教材や課題に、主体的にじっくりと向き合うことができる授業の工夫〜「おたからいっぱい あき!」の実践を通して〜東京都小平市立小平第五小学校教諭 栗くり原はら 智とも紀き生活
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