教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.6 (小学校版)
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「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点音楽ー 特集の視点教科18❶どんな曲かな?曲のみりょくを見つけよう。・・楽ふを見ながら演奏をきいてみよう。・・歌詞を声に出して読んだり、主なせん律のところを歌った❸パートに分かれて練習しよう。・・自分の声に合うパートを選ぼう。・・曲の各部分でのパートの役割を考えて、声の強さや音色を❹みんなで合わせよう。・・和音のひびきや音の重なり方の変化など、曲のしくみや特❺自分たちの表現をめざそう。・・演奏を録音してきいたり、だれかにきいてもらったりして、自分たちの思いや意図が伝わっているか、「もっとこうしたいな」と思うところを話し合おう。りしてみよう。・・曲全体のイメージやいいなと思ったところを話し合おう。❷曲の特ちょうをとらえて、イメージを共有しよう。・・❶で出た意見を確かめながら、きいたり歌ったりしよう。楽ふの記号にも注目して、速さ、強弱の変化、歌詞とせん律の関係、ばん奏の効果など、気がついたことをまとめよう。・・作者はだれに向かって、どんなメッセージを曲にこめたのか想像してみよう。くふうしよう。ちょうをとらえながら歌おう。・・自分たちの思いや意図を大切に、よりよい演奏にしていくためのポイントを考えよう。・・たがいによくきき合って、さらにまとまりのあるアンサンブルにするために、いろいろためしてみよう。(例)パートどうしの音量のバランスなど 音楽の授業では、子どもたちにどのような「考える」時間を提供できるでしょうか。本稿では、音楽の授業の中で、子どもたちに何をどのように考えてほしいのか、教育界の動向をふまえ検討してみたいと思います。 まず注目したいのは、あらかじめ特定の答えが定まっていないものに向き合い、自分なりの答えを見いだしていく力の育成が求められているということです。 例えば、平成28年に示された「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(以下、「中央教育審議会答申」)には、人工知能が進化する時代における人間の強みとして、答えのない課題に対して、多様な他者と協働しながら目的に応じた納得解を見いだすことができることと示されています(中央教育審議会、2016、p.10)。そして、このような時代においては「解き方があらかじめ定まった問題を効率的に解いたり、定められた手続きを効率的にこなしたりすることにとどまらず、直面する様々な変化を柔軟に受け止め、(中略)自分なりに試行錯誤したり、多様な他者と協働したりして、新たな価値を生み出していく」(同上)ことが求められています。 このような「特定の答えがない課題」との向き合い方として、「対話的な学び」に着目してみましょう。「対話的な学び」については、初等教育を経て高等学校芸術科(音楽Ⅰ)に至る段階で、次のような方針が示されています。 「対話的な学び」の実現のためには、一人一人が「音楽的な見方・考え方」を働かせて、音楽表現をしたり音楽を聴いたりする過程において、互いに気付いたことや感じたことなどについて言葉や音楽で伝え合い、音楽的な特徴について共有したり、感じ取ったことに共感したりする活動が重要である。客観的な根拠を基に他者と交流し、自分なりの考えを持ったり音楽に対する価値意識を更新したり広げたりしていく過程に学習としての意味がある。中央教育審議会、2016、p. 166 ここで確認しておきたいのは、客観的な「根拠」をもとに、他者と交流し、「自分なり」の考えをもったり、音楽に対する価値意識を「更新」したり広げたりしていく過程に意義が認められているということです。教育出版『音楽のおくりもの 6』pp. 16-17はじめに「特定の答えがない課題」との対峙音楽科における「対話的な学び」「表現」において「考える」理想とする表現の探求 以上をふまえ、例えば「表現」領域における合唱の在り方について検討してみます。教育出版の6年生の音楽科教科書の16-17ページに示されている学び方の例をみてみましょう。 16-17ページには、題材「演奏のみりょく」の教材として「ぼくらの日々」が掲載されており、「思いや意図を大切にしながら、みんなで表現をくふうしよう」という学習のめあてと、音楽活動に協働して取り組む学び方の例(学び合う音楽)が示されています。学び方の例「学び合う音楽」音楽の授業において「考える」とは?新潟大学教育学部准教授 工く藤どう 千ち晶あき音楽

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