「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点道徳ー 特集の視点教科22 道徳科は、各教科等をとおして行われる道徳教育を補充・深化・統合する要としての役割が求められています。しかし、『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科 道徳編』には、道徳教育の課題として次の事例があげられています(資料1)。 1つめは、歴史的経緯に影響され、いまだに道徳教育そのものを忌避しがちな風潮があることや、他教科に比べて軽んじられているという課題です。2つめは、読み物の登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導が行われたり、特定の価値観を押しつけた指導をしたりするという課題です。 よりよく生きるためにはどうすればよいか、人としてよりよく生きるうえで大切なものとは何か、自分はどのように生きるべきかなどについて、ときには悩み、葛藤しつつ、考えを深め、自らの生き方について考えていくことが大切です。 学習指導要領で求められていることから、私が道徳科の学習で大切にしていることは「自我関与」です。そのためにも教材を読み取るだけではなく、「自我関与」を伴いながら学習を進めていく必要があると考えています。 また、「自我関与」を伴うことで「自己の生き方についての考えを深める」ことができると考えます。そのためにも、「道徳的価値の理解」である、「価値理解」「人間理解」「他者理解」の力を発揮させながら、児童の道徳性を養うことが必要です。この3つへの理解があってこそ、自己の生き方を見つめ、道徳性が養われることにつながるのです。 さらに、道徳的価値を理解するために深めるべき3つの「理解」を発揮させるために、過去の自分と未来の自分を比較したり、教材中の人物と自己を重ねて見つめたり、自己と他者を比較して見つめた資料1 道徳教育の課題資料3 自我関与の場を設定したときの学習活動と発揮される3つの「理解」 このように授業を行うことで、3つの「理解」を発揮させながら、「自己の生き方への考え」を深めることができると考えます。りすることが大切です。道徳的価値の3つの「理解」を発揮させるということを図に示すと、右のようになります(資料2)。 道徳的価値の3つの「理解」を発揮させるために、授業構成を4つの学習段階で行います。また、それぞれの段階に、私が大切にしている「自我関与」を位置づけ(資料3)、3つの「理解」を発揮できるようにします。 この実践では、児童が「自我関与」を伴って考えられるようにするために、私が大切にした工夫を紹介します。第5学年 道徳科 主題:自分の役割を考えてC よりよい学校生活、集団生活の充実教材:「森の絵」(『はばたこう明日へ』教育出版)ねらい:集団の中での自分の役割について考え、みんなで協力し合ってよりよい学級や学校をつくろうとする態度を育てる。あらすじえり子さんのクラスは、学習発表会で劇をすることになった。えり子さんはやりたかった女王役を友達に譲り、自分は道具係となる。しかし、自分の仕事である「森の絵」を描く仕事にやる気が出ずに葛藤する。その中で友達の言葉を聞いたり、がんばる姿を見たりして、自分の役割について自覚していく。資料2 3つの「理解」の発揮学習指導要領で求められている道徳科学習道徳科の学習で大切にしたいこと道徳的価値の3つの「理解」を発揮させる授業構成授業実践事例道徳的価値の3つの「理解」力を発揮させる児童を育てる道徳科学習福岡県久留米市立長門石小学校教諭 原はら 大だい輔すけ道徳
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