はるえ先生のお悩み相談連載295年生担任、初めての高学年です。学級の子どもたちの学力のばらつきが大きく、特別支援の観点から配慮が必要な子もいます。学習習慣がついていないので宿題をたくさん出してほしいという保護者の声がある一方で、塾や習い事で忙しくて宿題に取りかかるのが夜遅くなり、寝不足ぎみの子が多いのも気になります。宿題こそ「個別最適化」が必要なのではないかと最近思うのですが、はるえ先生はどう考えますか? 本当にそう思います。宿題の「個別最適化」に大賛成です。 そもそも、宿題の目的ってなんでしょう? 「自主学習の習慣をつけるため」「授業で習ったことの理解を深め、定着を図るため」と考える先生が多いでしょうか。「子どもの習熟度を宿題で把握する」という先生もいるでしょう。単純に授業中に終わらせることができなかった課題を、家でやってくるよう指示する場合も少なくありません。しかし、そもそもルーティンで日々の宿題を出すなど、いってみればそれ自体を目的化してしまっていることはないでしょうか。授業のあり方が大きく変わってきた今、宿題についても見直す時なのかもしれません。 自主学習の習慣をつけさせるのであれば、課題を指定する意味はないですものね。私が小学校の時の宿題は「なんでもよいから、何か勉強して、提出しよう」というものでした。自分で決めてよいとなると格段に意欲が増したことをよく覚えています。ある日は計算、ある日は教科書のまとめと、何もやりたくない日は3行日記を書いたりしたものです。 授業の理解や定着が目的なら、自分の学力や習熟度に合わせて難易度や量を調整できるようにする必要があるでしょう。 習熟度を確認するためなら、一定時間取り組んでみてわからなかった問題やできなかった問題はそのまま提出させないと、意味がありません。ところが子ども本人や保護者の多くは宿題は「やらなければいけない」「やらないと叱られる」と認識しています。だから、授業の内容を理解していれば解ける問題を、保護者がつきっきりで教えているという話をよく聞きます。今の時代はAIが解いたものを提出している子どももいるかもしれません。課題の意図をしっかりと伝え、「できなかった」「わからなかった」と言える環境をつくることが重要です。そうすれば、宿題が「できなかった」子どもたちに対して、次にすべきことも見えてきます。もう一度授業で説明し直すのか、個別にフォローするのか、よりスモールステップの課題を用意するのか、などを考える。それが先生の本来の仕事ですね。 授業中に終わらせることができなかった課題を、安易に宿題にするのは考えものです。次の授業で困るという先生側の事情も理解できないわけではないのですが、本来、簡単に宿題ができるくらいの子なら、授業で学習を終わらせることができるはずなのですから。 大事なのは、一つ一つの課題について、「この宿題はなんのために出すのか」を考えているか、そして、子どもたちにそれがきちんと伝わっているか、だと思うのです。その積み重ねが、自ら学ぶ力につながっていくと思います。はるえ先生プロフィール金子晴恵先生。2002年より学習支援教室「アンダンテ西荻教育研究所」を主宰。発達障害などの子どもたちの学習指導、親や教師の相談等に携わる。著書に『はるえ先生とドクターMの苦手攻略大作戦』(教育出版2010年)など。Aはるえ先生のお悩み相談Q
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