「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点国語ー 6特集の視点教科 国語という教科は何を学ぶのかがはっきりしません。算数なら「計算ができるようになった」、社会なら「都道府県の特徴を知ることができた」というように、その時間に「これを学んだ」というものがはっきりしています。もちろん国語でも「漢字を覚えた」「主語・述語の関係を理解した」というはっきりしたものがあります。授業参観などで言語事項の単元を扱う教師が多いのは、その1時間で何を学んだかが保護者のかたにわかりやすいからではないでしょうか。 そうした知識とともに学びの中で伸ばすべきものが思考力です。私は、思考力は主に8時間や10時間扱いといった、配当時数が多い単元の中で、子どもたちが関わり合い、考える時間が生まれる中で伸びてくる力だと考えています。また、その考える力を積み重ねていくのは、各学年のどのような教材を扱うかという「横の目線」に加えて、1~6年の教材のつながりを見る「縦の目線」、教材の系統性を意識することも大切になってきます。 国語の学習に限りませんが、子どもたちが主体的に考えようとする場面は、一つは知らないことを知りたい、わからないことを理解したいと思ったとき、もう一つは自分が正しいと思っていた意見が友達とずれていたときです。授業の中でそういった場面を作ることができれば、主体的に考える時間が自然と生まれてくるのではないでしょうか。 そうはいっても、子どもたちが自由気ままに意見を出し合って「みんな違ってみんないい」で終わってしまっては、わざわざ教室に集う意味がなくなってしまいます。 そこで私は、話し合い、考える土台を作るために、どの学年の担任になっても、国語の文学教材では『おおきなかぶ』、説明文教材では『はたらくじどう車』(ともに教育出版「ひろがることば 小学国語」1年)を使い、短い時間でその学年までに身につけておくべき知識・技能をクラス全員で確認するようにしています。 文学教材であれば「登場人物」や「中心人物」「場面」など、説明文教材であれば「段落」や「はじめ・中・おわり」「話題提示」「具体例」などです。「登場人物の気持ちを考えよう」といっても、子どもたちの中で「登場人物」や「中心人物」の定義に違いがあれば、話し合うことはできません。これらの言葉の定義をクラスで共通して認識しておくことで、話し合いの土台が共有できるようになります。クラスのきまり(学習用語や読み進め方)を全員が理解したうえで話し合うことができれば、より対話的に、より深く学べるのではないでしょうか。5年生の『大造じいさんとがん』を学ぶ前に、短時間で『おおきなかぶ』の授業を行いました。このように、低学年の教材を使って共通理解を図り、話し合いの土台を作っていきます。教室の掲示板を使って、学習したことを振り返ることができるようにしておきます。国語で思考力を伸ばすには低学年教材を使用した土台作り系統性のある授業で考える力を育む早稲田実業学校初等部教諭 加か野の 俊とし明あき国語
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