教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.7 (小学校版)
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音楽教科の視点(グループ活動、台本の完成) 6人の中で一つの作品を選び、全員が演じられるように登場人物の数を設定します。一人一役に拘らず、二役を演じる児童もいます。引っ込み思案の児童がいても、一人一つのセリフをもてるように働きかけます。(4)台本を持ちながら演じてみる 自分たちのつくった台本を演じてみようとする活動が、歌詞に込められたメッセージや思いを自然に理解しようとする気持ちにつながります。どのように表現するかをディスカッションすることで、次第に台本の1番伝えたい「テーマ」が明確になってきます。ただ歌うだけではなく、表現しようとする「表現者」に変化している様子を見ることができました。ここでは、歌を歌わないで歌詞を喋り言葉にします。前後の内容が自然になるようにセリフを変えることもあります。(5)音楽(ピアノ伴奏)を加えて表現する カラオケ音源ではなく、教師がピアノ伴奏者として資料1 台本制作用ワークシート資料2 児童が制作した台本参加します。前奏の入るタイミングやBGMの段取りを児童と教師で共有します。教師が参加することで、児童がどういった意図でこの曲を感じているかを知ることができます。台本の内容に合わせてアレンジした伴奏をすることで、児童が台本の中に入りやすくなり表現力が豊かになります。また、電子ピアノを使用すると効果音やレイヤー、バンドも加えることができて効果的です。(6)発表する 衣装や道具、舞台などを使うことなく、教室などの空間で発表する場を設けます。一生懸命に演じる表現は、聴衆に感動や共感を生み出します。聴衆の前で、自身の表現をすることで満足感を得ることができ、他者の表現を見て他者を理解することで表現者と聴衆との間に強い絆が生まれ、音楽を通じたコミュニケーションを感じることができました。 私は、児童とこの歌唱と創作を併せた活動に取り組み、児童の歌唱力がより豊かで魅力的なものになったと感じました。学校教育では、技術的なスキルの習得だけでなく、感情表現や自己表現の能力を育み、児童から生まれた個性を大切にしたいと思っています。特に、デジタル技術の進化などで表現の仕方が多様化し、共感を生む観点もさまざまになっているように感じています。こういった音楽の授業が、演劇教育としても浸透するよう目ざしつつ、児童が感動体験できるような授業づくりを心がけています。イラスト:慶應義塾幼稚舎理科教諭 柊くき原はら 礼れい士じ【参考文献】・ファミリーミュージカル「人間になりたがった猫」より『すてきな友達』梶賀千鶴子 作詞/鈴木邦彦 作曲令和6年度版「小学音楽 音楽のおくりもの 6」教育出版 p.57JASRAC 出 2405953-401【補足】・ファミリーミュージカル「エルコスの祈り」より『語りかけよう』/同「小学音楽 音楽のおくりもの 6」p.56『語りあおう』も、おすすめの教材です。19(2)創作した台本を少人数で交換して読む 6人程度のグループを作り、台本を交換します。こうすることで自分にはなかった世界観や想像を知ることができます。また、完成していなくても他者同士で新たな想像が生まれ、複数の児童で創作しようとする姿を見ることができました。(3)一つの台本に絞り、内容を深めるおわりに

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