教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.7 (小学校版)
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必見!! 合点!! 著作権!   使い方によっては、自由に公衆送信できるとは限りません。前号でもご説明したように(※1)、第35条により、授業での著作物の利用は「権利制限(著作権者の権利を制限し、利用者の自由な利用を可能にすること)」といって、一定の要件を満たせば無許諾で使えます。デジタルの教科書や教材には、「学習者用デジタル教科書」のほか、それに資料などのデジタル教材を加えた「学習者用デジタル教材」、さらに「指導者用デジタル教材」という種類があります。 この中で、「学習者用デジタル教科書」は、紙の教科書と内容的には同等の「教科用図書代替教材」(第33条の2)として定められています。授業内で通常想定される利用方法、例えば、ビューアで閲覧する、ストリーミングで朗読音声を聞くなどについては、自由に使えるようにしています。 しかし例えば、指導者が、学習者用デジタル教科書の画面の一部を切り貼りして独自の教材を作り、それを学習支援アプリを介して学習者に配るような場合   前号でもご紹介したように、学校での著作物の利用にも、「学校」など教育機関が行う「授業」であること、学習上「必要と認められる限度」の利用であることなど、要件があります。そこで大切なのは「著作権者の利益を不当に害」さないことです。 そもそも第35条は、教育の場において多様な著作物を、コストや公衆送信のことも含めて、できるだけ自由に利用できるようにすることで、教育の機会均等を保障し、教育の質を高めるためのものです。 とはいえ、著作権者の利益を奪ってしまっては、新たな文化的創造を阻害しかねませんので、一定の要件を定めているのです。 授業での公衆送信を伴う著作物の利用について28※1※2は、SARTRASへの手続きが必要です。 これは、紙の教科書の紙面を切り貼りして学習支援アプリで使うのと、同じ考え方です。 教育に関する著作物の利用を定めた第35条については、「運用指針」(P25)(※2)に詳しいですが、対面の授業であっても学習支援アプリでの著作物の利用は公衆送信を伴うため、許諾は不要ですが、SARTRASへの手続きは必要です。 「学習者用デジタル教材」「指導者用デジタル教材」は第33条の2の対象ではないものの、授業内で通常想定される利用方法は、発行者があらかじめ権利者から許諾を得ているため、使うかたの権利処理は不要ですが、学習支援アプリの利用をするような際は、第35条によりSARTRASへの手続きが必要です。 デジタル教科書や教材については、著作権法上の扱いのほかに、「利用規約」が発行者によって定められています。そちらもあわせて確認のうえ、ご利用ください。SARTRASが発足したのも、著作物利用の範囲拡大に伴い、著作権者の利益を守るため、「補償金」という一定程度のコストを、著作物を利用された著作権者に分配することで、その利益を守るためです。 一方、補償金の手続きや支払いは、学校や個々の指導者ではなく、教育委員会などの「学校の設置者」が行うと定め、指導者の事務的な負担を軽減してもいます。(本誌vol.4もご参照ください。)(※3) 最後に、このたび当社より『ケース別Q&A 学校のための著作権マニュアル』(藤田晶子 監修・西田光昭 編著)が刊行されました。学校の日常場面での著作物の利用について、具体的な例をあげて解説しています。こちらも是非ご参照ください。(※4)※3本記事が、学校を中心に教育の場における著作物の利用について、先生がたのご判断の一助になれば幸いです。※4※本記事中、条文番号は著作権法のものを示しています。デジタルの教科書や教材はそもそも公衆送信されているので、中身も自由に公衆送信で使えますね?授業では著作物が自由に使えるといいますが、意外に制約も多いのでは?次号では、画像や映像の著作物の利用について考えてみたいと思います。p.26-27「いいね! 便利だね!」も、あわせて読んでください。

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