国語教科の視点 ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や、児童生徒による自己評価や相互評価等の状況評価の観点評価の観点 では、具体的に「主体的に学習に取り組む態度」はどんな方法を用いて評価したらよいのでしょうか。 先の中央教育審議会の報告によれば、以下のような例があげられています。 しかし、ただノートの記述を見て、その分量の多さや記述の丁寧さなどを見ればよいというわけではないでしょうし、発言を積極的に行っているということだけで態度がよいと判断できるわけでもないでしょう。 重要なのは、「知識・技能」「思考・判断・表現」と結びついたものとして、意思的な側面から「主体的に学習に取り組む態度」を捉えることです。 例えば、作品の一部を授業で扱ったあと、その作品全体を読んでみたいと思い読み通したり、気になった点を自分で調べたりするなどの様子に、「主体的に学習に取り組む態度」を見ることができます。 また、授業において、粘り強く、自分の考えが伝わるように書き方を工夫して、意見文を書く場面なども、「主体的に学習に取り組む態度」を見る機会として生かすことができるでしょう。 その際、学級にいる多くの子どもたちの様子をその場で一度に把握することは難しいことが予想されます。そこで、学習に向き合う姿勢や態度の変化を捉えるために、学習を振り返って記述する機会を設定することも大切になると考えられます。 つまり、振り返りシートなどを活用し、単元の始まる前と後では、どのように自分の考えが変化したかについて、子どもたちが自分自身で捉えることができるような機会を設定するということです。 振り返りシートでは、学習が楽しかったか、おもしろかったかということよりも、登場人物の捉え方や作者の意見に対する見方・考え方が自分の中でどのように変化したのかに注目することで、「知識・技能」「思考・判断・表現」と結びついたものとして、自らの学習を調整しようとする様子を見取る糸口とすることができるでしょう。 あるいは、書き表し方の工夫について、友達と交流【引用・参考文献】・『児童生徒の学習評価の在り方について(報告)』中央教育審議会(2019年1月21日)・『小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)』文部科学省初等中等教育局(2019年3月29日)した際に得たアドバイスなどを踏まえて、もっとよいものにしようと粘り強く試行錯誤した様子を振り返るということも考えられます。 ただし、振り返りは毎時間必ず必要というわけではありません。単元などの内容のまとまりを意識する必要があります。また、「主体的に学習に取り組む態度」を毎時間、常に把握して総括的評価としての評定にしなければならないわけでもありません。子どもたちの日常の様子を見て、次の指導へと生かす形成的評価と、評定として記録に残す総括的評価との役割分担を念頭に、評価の機会を設定することが求められます。 いずれにしても、振り返る機会などの設定により、粘り強く、試行錯誤しながら学習を進めていく力を養うことにつなげていきたいところです。 実は、振り返るという行為は子どもたちだけに求められるものではないと考えられます。 教育評価(evaluation)とはそもそも、子どもたちの学習状況を把握したうえで、教師が自分の指導のあり方を振り返り、次の指導のてだてを考えるためのものでもあります。つまり、子どもたちの理解を深めるために、発問の仕方がふさわしかったか、発言の取り上げ方が適切であったかなどを振り返り、その後の指導のあり方を模索するきっかけになるとされるのです。 評価という行為は、ともすれば、多忙化に拍車をかけるものとして捉えられがちです。 けれども、教師にとっては、指導を改善する糸口に、また、子どもたちにとっては、教師とのやりとりの中で自己評価能力を高めて、自ら学習を調整し進めていく力を伸ばすきっかけにもなります。 そうした観点から教育評価の役割を考え直すと、そこには、子どもたちと教師とのコミュニケーションの一環としての評価の役割も見えてきます。それはまるで、国語科で大切にする言葉がコミュニケーションとしての役割を果たしているのと同じように。 評価を仲立ちにして、子どもたちと教師が明日の学習の道筋を描き出すことができれば、負担感も多少は軽減されるかもしれません。7評価の観点知識・技能主体的に学習に取り組む態度思考・判断・表現振り返るという行為の大切さ学習評価もコミュニケーションとして
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