一工夫で授業が変わる!~授業力を磨くアイデア~教科の視点 数学❶3桁のときはどうなるか?4桁は?❷桁を増やしたとき、どう“入れかえる”か?❸「積」はどうなるか?❹11の倍数となるような他の計算はないか?の視点教科k-1 私なら思い浮かぶのは、「差」です。確かに教科書でも、「差」が9の倍数となることはこの後の練習問題として位置づいています。さて、他には何が考えられるでしょうか。私は他に次のことを考えました。特集nー●自分自身に『次は何を考えますか?』と問うて教材研究してみよう!●生徒に『次は何を考えますか?』と問うてみよう!12 本稿のタイトルの言葉に出会ったのは、大学2年の数学教育の授業でした。頭を悩ませる数学の問題が出題され、周りの学生と協力しながらもなんとか答えを出した矢先、その教授は笑顔でこう言いました。『次は何を考えますか?』 大変お恥ずかしいのですが、当時の私には数学の問題というのは解くことがすべてで、「やっと解けたのに次と言われても……」と思っていました。 今は違います。大袈裟に言えば、「答えが出てから数学が始まる」とまで思っています。とはいえ、私がこのように思っていても、生徒の多くは当時の私と同じかもしれません。 これに関連して、私が日々実践する中から授業のひと工夫として提案するのは次の2点です。 例えば教科書のこの問題(教育出版2年p.31)を解いた後、先生方は、『次は何を考えますか?』 私は特に❶と❷に関心を持ちました。先生方も面白い発見がありましたら、ぜひ教えてください。 先の❶〜❹は、以下の命題の下線部に着目していると見ることができます。「2桁❶の自然数と、その数の十の位の数と一の位の数を入れかえて❷できる数との和❸は、11の倍数❹になる。」 こうしてみると、命題として表すこと自体にもまた、重要な意味があると思えてきます。例えば、生徒に 26+62= 41+14= 83+38=と式だけ提示し、帰納的にこれらがどういう2数か、「和」にはどのような性質があるかを考えさせることから始めるのはどうでしょうか。「〜は(ならば)…である」という形式で述べることにより、「証明すべき対象が明確になること」「仮定や結論が顕在化されること」の他、「(命題として)明確に述べたことで、新たな問題を発見しやすくなること」を価値づけることができるのではないでしょうか。 そして、『次を考えること』によって、問題どうしの関係が見えてきます。例えば❶が3桁の場合を考えてみます。abcとcbaのように入れかえた和、すなわち、(100a+10b+c)+(100c+10b+a)のとき、共通因数でくくれず倍数は見えてきません。それでは、abcとbcaとcabという入れかえ方ではどうでしょうか。さらに、acbとbacとcbaも含めた3つの文字でできるすべての場合(6通り)の総和はどうでしょうか。これを探究してみると、結果的に今回の問題は「n桁の数の各位を“入れかえた”数の総和は、∑ 10 の倍数である」の特殊であるといった関係k=1が見えてきます。 このように、その問題を解くことを超えて次を考えることにより、問題の様々な表情が見えて面白くなります。それが面白いと思う生徒になってほしいですし、命題を見た際に『次は何を考えるか?』と思う生徒になってほしいものです。私は「和」で考えてみましたが、「差」の方は生徒も探究しやすいと思います。はじめに自分自身に問うてみよう!次は何を考えますか?東京学芸大学附属世田谷中学校教諭 松まつ本もと 紘こう一いち朗ろう数学
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