の視点教科特集学びが広がる授業デザイン教科の視点数学ー 中央教育審議会(2021)によれば、将来の変化を予測することが困難な時代において、事象から解決すべき課題を見いだし、主体的に考え、多様な他者と協働的に議論し、納得解を生み出すことなどが求められています。そのために、学校教育において、児童生徒の探究的な学びの充実を図ることが必要かつ重要であると考えます。 「中学校学習指導要領解説 数学編」では、課題学習について、探究的な学びの充実を図るために、各領域の内容を総合したり日常の事象や他教科等での学習に関連付けたりするなどして見いだした問題を、生徒が主体的に解決していく学習と位置付けられています。本稿では、その一環として、鐙基倫の前任校である秋田県立秋田南高等学校中等部3年生で実施している「探究的な学習」(標準時数に年間35時間を加え特設授業としたもの)の実践を考察の対象にして、「メディアの情報を実験・分析し、数学的根拠に基づいて評価し自分なりに結果を得ること」、「個別のメディア収集活動とグループ全体の協働による多面的・多角的な発想」、「ゴールを見据えたアプローチの必要性」の3つに光をあてた授業デザインについて考えていきます。 あるグループでは、書籍で「ビュフォンの針」について知り、実際にその通りになるか疑問を抱き、「ビュフォンの針」をテーマとしました。 「ビュフォンの針」とは、平面上に間隔dで平行線を引き、長さl(≦d)の針を適当に投げたとき、針が線と交わる確率は2lπdに近づくというものです。 はじめに、爪楊枝の長さをa、平行線の幅を2aとして、文献に記載されていた方法で実験を繰り返し、確率が1πに近づくかを確かめたうえで、平行線の幅を変えて実験を行い、針が線と交わる確率が2lπdに近づくかを確かめました。 次に何を探究するかについて、次のようなグループの生徒と教師との対話がありました。 この後で行った実験は、次のような内容です。 この実験を終えた後に、確率から面積を求めることができることを利用して、モルワイデ図法の世界地図から陸と海の面積比を求めることに挑戦していました。生徒の学びを振り返って このグループからは、教師の助言もあり、「ビュフォンの針」の考え方を楕円などの曲線に応用したいという考えが出てきました。そして、まず円に応用して実験的・理論的に分析をし、よい評価が得られたら他の曲線にも活用しようという方針も示されています。 このように、書籍やインターネット等のメディアの情報を集めてまとめるだけでなく、実際に調査・実験をして、そのことについて、分析・評価し、自121辺2cmの正方形と正方形に内接する円に針の先端を落としたときの円内と円外に落ちる確率から面積を求める実験を行う。これまでの実験を生かして、他にできることはありませんか。例えば、条件をもっと変えて、何か別の実験をしてみるのはどうでしょうか。じゃあ、正方形の中に円を入れて、そこに針を落とすとかは、どうかな。まずは、円でどうなるかを考えてみよう。それができれば、いろんな曲線に応用できそうだ。これから研究をどう進めますか。針の長さを半分や1/4にしてみたり、線の幅を変えてみたりしたけど。四角形にして、そこに針を落としたらとか。円にするとか。組み合わせた図形に針の先端を落として、円の部分に落ちた割合と正方形の部分に落ちた割合を考えるということかな。楕円にするとかどうかな。放物線もありかな。いろんな曲線でできそうだな。はじめに探究テーマ「ビュフォンの針」中学校数学科における探究的な学びの具現化に向けた授業デザイン秋田大学教育文化学部附属中学校教頭 鐙あぶみ基もと倫のり 秋田大学教育文化学部講師 加か藤とう 慎しん一いち数学
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