の視点教科特集学びが広がる授業デザイン教科の視点理科ー ここ数年で、全国の小中学校では、国のGIGAスクール構想を受けて、タブレット端末が使われ始めました。昨年度まで勤務していた大府市立小中学校・大府市教育委員会では、平成22年度より総務省から委託を受けたフューチャースクールの実証校として、タブレット端末の有効性を検証してきました。その検証を受け、平成27年度には電子黒板やデジタル教科書、そして平成28年度には中学生2人に1台のタブレット端末が配備されるなど、先進的な取り組みが行われてきました。私自身、大府市教育委員会で勤務した7年間で、フューチャースクールや愛知県学校視聴覚教育研究大会を担当するなど、ICT機器を活用した教育(ICT教育)についての検証を継続しながら、プログラミング教育にもいち早く取り組み、令和2年度には大府市プログラミング教育の手引き「FUN!プログラミング」の発刊に携わりました。本稿では、タブレット端末がツール(文房具)として活用され、「令和の日本型学校教育」(「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実)がどのように進められていくのかについて、私が観させていただいた理科の教育実践を紹介しながら、考察していきます。 大府市では、タブレット端末が導入され、いくつかの授業支援ソフト(アプリ)を試してきましたが、現在は多くの教員がロイロノートを活用しています。ロイロノートの特徴は「資料の配布と回収が容易にできるため、個別の支援と協働的な学びが行いやすいこと」「シンキングツールであるとともにプレゼンテーションの作成も容易であること」「アンケート機能を使い、振り返りができること」などがあげられます。本稿で紹介する授業で配布される資料は鮮明な写真であり、ズーム機能で拡大することで、細かい部分まで観察できるものでした。 小学校の学習指導要領にある理科の目標の冒頭に※「デジタル露頭観察」とは、教師が撮影してきた写真を個人のタブレット端末に配布し、露頭の写真に直接書き込んだり、ズームをしながらスケッチしたりする活動です。その際、サンプルとして採取した岩石も生徒が手にとり、露頭の写真と比較することで、より地層の特徴をつかむことができるというものです。(第1~3時)(第4~5時)は、「自然に親しみ」と記載されています。多くの方が思われているとおり、「自然事象との出会い」が理科の学びの導入で、教員は、生徒と自然事象とをどのように出会わせるのかということになります。当然、直接体験させることが前提となりますが、中には、直接体験しにくい教材もあります。今回、紹介する実践は「大地の歴史と地層」です。本単元において、岩石や鉱物、そして化石などはサンプルとして採取した実物で学ぶことはできますが、露頭を直接体験することは大府市ではなかなかできません。そこで、タブレット端末の活用が考えられます。大府市より車で1時間ほど南に行った保存のよい露頭から教員がサンプル採取と同時に写真撮影をしてきて、生徒一人一人が疑似体験「デジタル露頭観察」を行えるようにし、自分たちが住む大地について深く考えさせようとしました。 全員が課題を把握した後、露頭の写真をロイロノートで配布し、気づいた特徴や気になる部分を写真に記入させ、提出箱に入れさせました。単元のまとめということで、岩石の粒や地層の様子な第1次第2次第3次(第6時)単元の学習課題をつかむとともに露頭の写真を大型ディスプレイで見せたり、タブレット端末に送信した写真をもとに断層のずれ方を考えさせたりする。地層の構成物として、堆積岩と化石について学習する。サンプルは教師が露頭で採取したものであり、堆積岩を身近にあるものと捉えさせる。本時 既習事項をもとに「デジタル露頭観察」※を行う。デジタル露頭観察14はじめにロイロノートの活用授業実践の骨子実践単元の学習計画本時の授業の様子タブレット端末を生かした授業デザイン至学館大学教授 鈴すず木き 達たつ見み理科
元のページ ../index.html#14