連載デジタル時代の学び 令和3年1月の中央教育審議会答申『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して』では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」が着目されています。加えて、いっそう大きな概念として、「一人一人の子供を主語にする学校教育」とも記載されています。「一人一人の子供を主語にする」とは、やや使い古された言葉ですから、当たり前のこととして通り過ぎてしまうかもしれません。しかし今こそ、この言葉をスタートに、現行の学習指導要領に基づいて、個別最適な学びや協働的な学びを実現していくことが大切なのだと思います。 1人1台端末の活用では、「国語や社会の成績を上げるためにどう活用するか」などと考えがちです。あるいは、「どうやって個別最適な学びや協働的な学びを実現しようか」と考えてしまいます。しかし、子ども一人一人を主語と考えるならば、まずは子ども一人一人の様子を把握したいと考えることでしょう。授業をどのように工夫するにせよ、まずは子どもたちの興味や考えなどの実態把握が欠かせません。 例えば体育の跳び箱であれば、教師は一見して子どもの「できている」「できていない」様子がわかりやすく、だからこそ段数を変えた跳び箱を用意して、それぞれに練習させることができます。しかし、国語や社会などはそもそも、子ども一人一人が何を考えているか、どのくらい学びが進んでいるのか、わかりにくいものです。従来から、指名して発言させたり、ワークシートに書かせたりしてきましたが、体育ほど一見してリアルタイムに実態を把握できない問題がありました。結果として「教師は伝各自コメントを入れていくと、今の様子が把握できるえた=子どもはわかった」と思いがちになり、ついつい単線型の授業展開、つまりは一斉指導に頼ってしまうのです。 この問題の解消のために、1人1台端末を使って、授業中に子どもの実態把握を試みてはどうでしょうか。特に共同編集機能の活用がオススメです。授業中思いついた意見や考えなどを、子どもに手を挙げさせるかわりに、端末で入力させていくのです。共同編集機能を上手に使えば、教師が全ての子どもの様子を把握できるだけではなく、子ども同士もたちまちお互いの様子を把握できます。 教師のほうで子ども一人一人が把握できれば、徐々に一人一人に合わせた指導を行いたくなります。こうした繰り返しが、結果として個別最適な学びにつながっていくでしょう。 「子ども一人一人が主語」を考えていくと、やがて協働のカタチの見直しへと発展します。 例えば、従来の理科の実験では、班で一つの実験道具を使い、協働で行ってきました。しかし、子ども一人一人が課題をもち、それぞれが実験を行い、22名前を入力コメントを入力東京学芸大学教授 高たか橋はし 純じゅん 東京学芸大学教育学部・教授 博士(工学)。総合教育科学系教育学講座学校教育学分野に所属。独立行政法人教職員支援機構客員フェロー(2020年~)。教育工学、教育方法学、教育の情報化に関する研究に従事。中央教育審議会臨時委員(初等中等教育分科会)(2019年~)、文部科学省「教育データの利活用に関する有識者会議」委員(2020年~)、「ICT活用教育アドバイザー」(2020年~)、「GIGAスクール構想の下での校務の情報化の在り方に関する専門家会議」座長代理(2021年~)等を歴任。デジタル時代の学び「1人1台端末」で「一人一人が主語」の学習へ「子ども一人一人が主語」をスタートに子ども一人一人を把握するための1人1台端末の活用子ども一人一人が協働するための1人1台端末の活用
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