ー4特集特別活動総合学習教科学習学びが広がる授業デザイン提言表「主体性」のタキソノミー(対象への関与と学びの所有権の拡大のグラデーション)(筆者作成) ここで、「子ども主語」とはどういうことかを整理しておきましょう。「子ども主語」の授業とは、学びの所有権が子どもたちにある授業であり(授業における参加と自治)、委ねられるべき部分(教科の本質的かつおいしいプロセス)が委ねられ、授業の先により広く深く学び始める姿が見られる授業です。例えば、通常「教師主語」で考えられがちな、「説明する」「板書する」「学びを価値づける」「まとめる」といった、授業における動詞について、「子ども主語」に置き換えて考えてみるとよいでしょう。さらに、「子ども主語」で考えるとは、「それは子ども本人に聞いてみたら」という問いを常に意識することです(子どもの意見表明権と参加権の尊重)。そして、子どもの側が、「それは自分で、自分たちで考えることだ」という感覚をもつことが重要です。 また、「主体性」と一言でいっても、そこにはレベルの違いがあるので、下の表のようなグラデーションで捉えておくとよいでしょう。学びの入り口において、対象への関心も薄く、表面的に参加している段階から、「おもしろそう」と興味・関心をもって食いつきはじめ、そのうちに対象世界に没入し、自ずと試行錯誤や工夫をはじめる。こうして対象と深く対話し学習への関与が高まることで、授業や学校の外の生活における関心の幅が広がったり、学んだ内容が眼鏡となり、考え方が思考の習慣になっていったりと、学校で学んだ先に子どもたちは教科などの世界に参画し学び始める。さらに「総合的な学習(探究)の時間」や課題研究においては、自分は何を学びたいのか、何をやりたいのかと、学び関与する対象、主題、問い、領域を自分で設定したりすることで、自己との対話を深め、学校外の世界のホンモノの問題や活動や人とも出会ったりもする。そうして、視座が高まり自分の軸が形成され、学習者は自らの学びや人生を生きる主人公になっていく。さらに、特に社会参画を伴う探究的で協働的な学びや、自分たちの学級や学校の集団を切り盛りしていく自治的な特別活動などを通して、目の前の現実を自分たちで創りかえていける実感と力量を高めていく。このように、「主体性」は、学校カリキュラム全体で育まれていくものであり、教科学習で主に担える範囲を明確にしつつ、そこにおいて、より「出口の情意」にフォーカスしていくことが重要なのです。 こうして、「子ども主語」の学びを生み出すうえで、また、より「出口の情意」としての「主体性」を育てていくうえで、先述した、子どもと同じものを“まなざす”「共同注視」関係(カウンターに横並びのような関係性)が重要です(図)。年度始まりや授業の入り口において、教師は材の魅力に誘うべく手立てを講じるし、比較的垂直的なナナメ関係であることが多いですが、学びが深まり、対象への関与が深まってくると、対象や問いにともに向き合い教室での学びにともに責任をもつ、より水平的なナナメ関係(「共同責任」関係)に移行していきます。授業をしていて、子どもの意見や発言に、「おもしろいな」「なるほど、そう考えるか」と感心したりすることも時折あると思いますが、その瞬間、子どもたちは教師を静かに学び超えているのです。 さらに、「総合的な学習(探究)の時間」などにおいては、共同注視関係は、教室での材を介した教社会関係を創りかえる対象世界を創りかえる軸(思想)の形成視座の高まり自分事の問いの深化問いの生成思考の習慣(知的性向)関心の広がり方略的工夫試行錯誤積極性(内発的動機づけ)受身(外発的動機づけ)出口の情意入り口の情意自治(変革人:エージェンシー)人間的成熟(なりたい自分:アイデンティティ)自律(探究人:こだわり)学び超え(生涯学習者・独立的学習者)学習態度(自己調整学習者・知的な初心者)関心・意欲表面的参加2. 「子ども主語」の主体的な学びをデザインする視点
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