教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.3 (中学校版)
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ー5特集学びが広がる授業デザイン提言学習環境のデザイン学習コーディネーターなど学習環境のデザイン対話誘い的誘導対話対話対話対話学習組織者的指導対話対話伴走者対話参考文献石井英真『授業づくりの深め方』ミネルヴァ書房、2020年。石井英真・河田祥司『GIGAスクールのなかで教育の本質を問う』日本標準、2022年。【著者プロフィール】石井 英真(いしい てるまさ)京都大学大学院 准教授 博士(教育学)1977年 兵庫県生まれ日米のカリキュラム研究や授業研究に学びながら、学校で育成すべき資質・能力の構造化やモデル化を考え、小・中・高の先生方と一緒に、授業づくりや学校改革などに取り組む。日本教育方法学会理事、日本カリキュラム学会理事、文部科学省中央教育審議会初等中等教育分科会「児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ」委員などを歴任。【略歴】2005年日本学術振興会(特別研究員)、2007年京都大学大学院(助教)、2008年神戸松蔭女子学院大学(専任講師)を経て、2012年より現職。【著書】『再増補版・現代アメリカにおける学力形成論の展開』(東信堂)、『今求められる学力と学びとは―コンピテンシー・ベースのカリキュラムの光と影』(日本標準)、『授業づくりの深め方』(ミネルヴァ書房)、『未来の学校―ポスト・コロナの公教育のリデザイン』(日本標準)など、著書多数。図「真正の学び」における「共同注視」関係の展開と「学び超え」の構造 (筆者作成)出典:石井英真編『高等学校 真正の学び、 授業の深み』学事出版、2022年対話伴走的誘導対話学習環境のデザイン対話対象世界知識教師学習者対象世界知識学習者教師ホンモノの当事者・実践者対象世界知識教師学習者共同注視学習環境リソース・共同体・文化 など学び超え学習環境リソース・共同体・文化 など師と子ども、子どもどうしの間の三角形の関係性を超えて、学校外にも展開していきます。すなわち、教師とともに問いや世界と向き合い未知を探究する共同責任関係を超えて、学校外のホンモノの当事者・実践者を伴走者とする共同責任関係に展開し、子どもが教師を恒常的に「学び超え」、学校から社会へと飛び出していくわけです。そうした「飛び出し」を促すうえで、教師やコーディネーターなどによる、子どものやりたいことを聴くメンター的な役割や、子どもの挑戦をまずはおもしろがることや、マッチングやコーチング的な役割が重要となります。 教師や授業や学校を必ずしも経由することなく、子ども主語の主体的・自律的な学びを求める声が高まっていますが、それは集団や協働性を排して、子どもが孤立して学ぶこととイコールではありません。孤独に自分と向き合う時間は重要ですが、そんなときでも、家族や友人や教師、これまで出会った人たち、憧れの人物、先哲など、「見えない伴走者」も交えた自己内対話によって学びは支えられています。自律的に学び続け、空気に流されず自立的で独創的な活動を展開しているように見える人たちにおいて重要なのは、個人としての自由で強い意志をもって、目標設定と振り返りといった効率的な自己管理が上手ということでは必ずしもありません。自立とは依存先を増やすことであるという見方もあるように、自分なりの社会的責任を引き受けていて、それゆえに次々と問いや課題を投げかけてくる共同責任学習環境リソース・共同体・文化 など対象があること、そして、多くの良質な「見えない伴走者」を心の中に棲まわせているかが重要なのです。学校でともに学ぶことの意味、教師の役割が問われる中、子どもたちと学校生活をともにし、その学びや成長を目的として子どもたちに関わる大人である教師だからこそ果たせる、伴走者としての「足場かけ」や「課題提起」者的役割が重要なのです。 ( ( ( ( ( (

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