教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 (中学校版)
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特集未来を拓く授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜教科の視点 数学明を評価・改善できるからです。 このような活動は、数学のよさを実感する機会にもなります。数学のよさというとおおげさに聞こえますが、ここでは表、式、グラフのよさを実感することができます。自分で使ってみて、または友人の説明を聞いて、それらのよさを実感すれば、次の機会でそれらを活用しようとするでしょう。また、式を使ってすぐには数値が求められない問題に遭遇しても、式のよさを信じて粘り強く考えるようになる可能性もあります。そのような変容を期待できるのです。 「主体的に学習に取り組む態度」の評価では、そのようなよさを実感することによって、粘り強く評価・改善をするようになる変化や、数学を活用するようになる変化を、生徒の姿勢や取り組み方の変容からうまく捉えてもらいたいと思っています。 「主体的に学習に取り組む態度」のうち粘り強い取り組みを行おうとする側面については、何に対する粘り強い取り組みを評価するかに注意が必要です。この点については、知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取り組みとされています。「関心・意欲・態度」が「数学への関心・意欲・態度」だったことと比べると、違いが明確で、学びに向かう際の粘り強い取り組みを評価することが必要だとわかります。授業で友人と協働して学ぶ場面が多い点からも、これまで以上に友人と協働する態度を育成、評価する必要が感じられます。 中学校1年生の空間図形の学習では、空間図形の表現を学習したあとで、立体の体積や表面積について学習します。この際、体積を求めるときには見取図を、表面積を求めるときには展開図を使うとわかりやすいことが多いです。そのため、はじめから表現を限定している授業を見かけることがあります。しかし、せっかく学習した表現方法(見取図、展開図、投影図)を活用する場面として立体の体積や表面積があるのですから、表現方法を選択したり洗練したりする活動も取り入れたいものです。例えば、立体の体積や表面積を求める問題では、必要な条件さえわかれば、見取図、展開図、投影図のどれを使っても求めたり説明したりできます。そのため、求め方を説明するためにどの表現を使えばよりよい説明になるかを考えてもらうのです。 その際、子どもに一人で考えさせるだけでなく、子どもたちどうしが自分の説明を伝え合って比較する機会を設けたいと考えます。見取図、展開図、投影図のどれを使うとよいかを友人と議論し、そのうえで自分の表現や説明を振り返って評価し、不十分な点を見つけて改善する機会とするのです。 このような活動を実現するためには、個人での活動と友人と協働する活動をいかに関連付けるかを考えておくことが大切です。 これは「主体的・対話的で深い学び」の視点からも大切なことです。主体的な学びを実現する条件には、授業の前半で子ども一人一人に見通しをもたせることと、授業の後半で自分の見通しを振り返らせることがあります。そして、対話的な学びを実現する条件には、事柄の本質をついた解決や説明はどれかを議論し、よりよい解決や説明を探すような話し合いを行うことがあります。実は、これらの条件は関連しています。例えば、授業の前半で子ども一人一人が見通しをもって解決に取り組んだとします。そうすれば、さまざまな見通し、解法が生み出されるため、話し合い活動ではどれがよりよいものかを話し合うことになります。そのような話し合い活動のあとで自らの見通しや解法を振り返れば、友人との比較から自分に足りない点が見えてきます。そうして自らの考えの不十分な点を評価できれば、次の授業に向けて思考や態度の改善にもつながります。そのような思考や態度の変容が起こることが、深い学びを実現するための条件となっています。関連しているのです。 先ほどの立体の体積や表面積を求める場面で、このことを考えてみましょう。授業の前半では、問題を解決するための見通しを立てます。その際、見取図を使うことで、模型が手元にあるときと同様の説明が可能と考える子どもがいるでしょう。一方で、表面積を求める場面で展開図を使えば、面積を求める図形がわかりやすくなると考える子どももいるでしょう。また、体積を求める場面で投影図を使えば、底面積と高さがわかりやすくなると考える子どももいるでしょう。子どもの解法や説明は多様となります。そして、解法や説明を伝え合う活動を通して、多様な解法や説明の存在を知れば、よりよいものを議論する対話的な学びを実現できます。そのうえで自分の見通しがよかったかどうかを振り返れば、次の授業ではこうしたいといった評価・改善につながります。 学びに向かう力を育成するためには、以上のように数学の特徴である表現の多様性をうまく活用し、友人との協働を通して、数学のよさを実感し、よりよいものを求める気持ちを強くする機会を継続的に設定していくことが大切となるのです。13ー個人の活動と協働する活動を関連付ける

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