特集の視点教科未来を拓く授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜教科の視点理科ー 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説理科編の目標には「自然の事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。(以下略)」とあります。私は、科学的に探究するための資質・能力を育成するためには、科学的に探究する学習体験こそが重要と考えます。そのためには、生徒が自ら見通しをもって計画できる知識・技能をもち、それを活用できる状態であること、また、主体的に探究を推し進めるワクワク感が生じるような場面設定が大切だと考えます。本稿では、第1学年の粒子の領域での探究的な学習の実践例を紹介します。 教育出版の現行版教科書では「1章 さまざまな物質とその見分け方」「2章 気体の性質」「3章 水溶液の性質」「4章 物質の状態変化」と単元構成され、物質の基本的な内容を学習します。その後に「気体の種類を見極める」という探究的な学習の課題を設定することにしました。この課題は主に2章と4章で学習した知識・技能と関連づけたり、組み合わせて考えたりすることを想定しています。図1 気体の準備図2 さまざまな物質の融点・沸点(教科書p.133 表1の一部)③液体窒素 教師用にガラス製のジュワーびんを、各班に発泡スチロール製のクーラーボックスを用意し、それぞれに液体窒素を入れます。④気体確認に必要なもの マッチ、燃えさし入れ、線香、石灰水(使用直前にろ過したもの)、リトマス紙、ピンセットなど。《授業》<導入> 教科書p.133表1には「さまざまな物質の融点・沸点」が示されています。この表には、融点と沸点の値が示されているだけではなく、約-200℃から3000℃のどの温度帯でどのような状態なのかが色分けされていて、考えやすくなっています。私たちがふだんの生活で目にしている固体の鉄や銅が、1000℃や2000℃を超える高温になると液体や気体に変化することが読み取れます。同様に、液体のエタノールやメタノールは熱湯で温めれば気体に、-115℃以下にすれば固体になること、気体の窒素や酸素も-200℃近くまで冷やすと液体に、さらに冷やしていくと固体になることが読み取れます。この表をきっかけにして、物質の状態変化の学習を想起させて授業を開始しました。<課題提示> ガラスのジュワーびんに液体窒素を入れると、沸騰して泡が出ている様子が見られます。この段階で、生徒の学びに対する期待感が生まれ、「先生、花を入れてみたい」との声があがります。希望者の中から代表者を一人選び、バラなどの花を液体窒素に入れ、花弁を粉々にしてもらいます。この光景を14《授業前》①気体 風船と試験管(ねじ口試験管)に、酸素あるいは二酸化炭素を入れ、風船の口に試験管をつなぎます。接続部分はパラフィルムで補強します。異なる色の風船を用いることで区別できるようにし、試験管にA、Bと書きます。班にどちらか一方が割り当たるように準備します(図1)。班の数が少なく、一班にA、B両方を割り当てることが可能であれば、そのようにします。ここでは班の数が多い例で紹介します。②資料 水素、窒素、酸素、アンモニア、二酸化炭素の融点・沸点の表と、温度と状態の関係を図に示したものをワークシートに【資料】として記載し、配布します。【資料】は、教科書のp.133表1(図2)を参考にして作成しました。はじめに第1学年「身の回りの物質」での探究具体的な授業展開既習事項を活用しワクワクする探究的学習お茶の水女子大学附属中学校教諭 薗その部べ 幸ゆき枝え理科
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