教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 (中学校版)
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特集未来を拓く授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜教科の視点 理科見て、生徒の気持ちはさらに高まります。ここで、花は何℃に冷やされたかを問いかけます。教科書の表1から、沸騰している液体窒素の温度は、窒素の沸点である-196℃だと気づき、液体窒素に入れると-196℃に冷却されることを確認します。 A、B2種類の気体を提示し、A、Bは【資料】のうちの水素、酸素、アンモニア、二酸化炭素のいずれかであると伝えます。これらの気体を液体窒素に入れて冷やしたときの様子を観察し、気体が何かを推測し、その気体を確認する実験を計画・実施して物質を確定するという課題を提示しました。<展開1> 奇数班はA、偶数班はBのように、気体を割り振り、隣り合う奇数・偶数班でペアを作ります。 まず、自分たちが担当している気体が入った試験管を液体窒素で冷やしたり、空気中で放置したりします(図4)。その過程での物質の変化や、冷えたときの状態から、気体が何かを【資料】をもとに推測します。次に、ペアの班どうしでA、Bを交換し、液体窒素で再度冷やして様子を観察し、気体が何かを推測します。<展開2> 試験管を元の班に戻し、担当している気体について、推測した気体であることを確認する方法を班で相談します。方法が決まったら、確認実験の準備をします。風船を外して、試験管内の気体について、確認実験を行います。このとき、ペアの班にも声をかけて、一緒に結果を確認します。 酸素は-196℃では液体になります。液体の酸素図4 各班での気体の冷却と放置の様子図5 液体の色や線香で物質を確認している様子図3 花の冷却【引用文献・参考文献】・文部科学省:『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 理科編』平成29年7月(令和3年8月一部改訂)はやや青みを帯びていて、磁性をもちます。見た目だけでも見当はつきますが、試験管内に火のついた線香を入れ、激しく燃えることで確認できます。(図5) 二酸化炭素は冷却途中で白い粉状の固体に姿を変えるので、生徒は液体を経ずに固体になる凝華を目の当たりにします。凝華したことから、二酸化炭素と見当がつき、試験管内に少量の石灰水を入れて振り、白く濁ることで二酸化炭素と確認できます。《注意点》 液体窒素を用いると常に窒素が気化し、空気中の酸素濃度が相対的に下がってしまいます。換気には十分注意し、常に新鮮な空気が入るようにします。また、液体窒素は凍傷を起こす危険があるので、直接触れないように注意させます。軍手は液体窒素がしみ込んで大変危険です。本探究では、試験管を木製の試験管ばさみで挟んで気体を冷却させました。 気体の候補に入れた水素は、-196℃では気体のままです。風船の体積は小さくなりますが、状態変化は起こりません。冷却時の様子から、4種類の気体の中で水素と見当がつきます。水素はマッチの火を近づけて可燃性があるかどうかで調べられますが、風船の中の気体も含めるとかなりの体積となるため、大きな爆発の危険性があります。そのため、本探究では水素を用いませんでした。また、アンモニアは確認実験を行う前に、においで判別できること、目やのどの粘膜を傷つける危険性があることから、本探究では用いませんでした。窒素も候補にすることが可能ですが、窒素であることを確認する方法が難しいため、本探究では適切ではないと考えました。以上のことから、本探究のA、Bの気体には酸素と二酸化炭素がふさわしいと考えました。 本探究は、液体窒素を使うためワクワク感が高まるという特徴と、学習した内容を想起し、それらと関連づけて科学的に思考し実験できるという特徴があります。既習事項を活用することで、生徒どうしの話し合いが進み、目的意識をもって実験することができ、さらに展開1、2の結果をもとに推測と確認という段階をふんだ考察を行うことができます。このような探究の体験をとおして、探究に必要な資質・能力を育成し、探究の原動力となる科学への興味・関心を醸成したいと考えています。15ーまとめ

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