特集の視点教科未来を拓く授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜教科の視点音楽ー 音楽科は、考えて試しにやってみるとか、自分の意見をもつといった機会が多い教科だと思います。多くの要素から、生徒が選択をして考えをまとめ、他者と共有する経験をさせてあげることが大切だと考えています。 加えて、なぜ音楽科は学校教育にあるのかということを考えながら授業することが大切だと思います。音楽科が情操教育の役割を果たすために、純粋に楽しかったとか、感動して鳥肌が立ったといった体験を生徒にさせてあげなくてはなりません。そして、なぜそう思ったのだろうということを生徒がひも解いていくと、聴く力や感じ取る力が増してきて感性が豊かになり、深い学びへつながるのです。 私が心がけているのは、授業の中で生徒たちに考えさせることです。課題に取り組むとき、生徒が根拠を自ら引き出して、考えをうまく述べられるようにしたいなと思っています。そのために、授業ではいろいろな方向から種をまくようにしていて、そのリアクションをフックに授業を展開しています。 現行版『中学音楽 音楽のおくりもの1』の教材「日本語の抑揚を生かした旋律をつくろう」に取り組みました。生徒が、言葉の抑揚と音の高低の結びつきについて考えるよい機会になりました。 取り組むときには、「この言葉の抑揚はこうなっているから、こういうふうに旋律をつくるんだよ。」山口先生が授業で活用したワークシートの例1と教えるのではなく、「この言葉の抑揚はどうなっているのか考えてごらん。」と生徒に問いかけるところからスタートするべきです。生徒に考えさせることで、「それなら、別の言葉の抑揚はどうだろう。」といったように、主体的に取り組む活動へとつなげることができます。抑揚と旋律の関係を学び、その知識を歌唱表現の学習に生かせるようになるとよいなと思います。 歌唱教材「夏の思い出」は、他の領域で学んだ知識を生かす教材として適しています。 私は、生徒が他の領域で学んだ強弱記号を使えるようになってほしいと考えています。これは、楽譜の指示どおりに表現できるようになるということだけではなく、作曲者が強弱を設定した理由まで考えられるようになってほしいということです。強弱記号を学習した後に「夏の思い出」に取り組み、楽譜の強弱記号を隠して生徒に考えてもらう課題を出しました。その際、生徒の思考のヒントになるように、尾瀬ヶ原の写真をたくさん見てもらいました。「ここは、こういった情景だからこういう風に歌いたいな。」そこまで考えてくれるようになってくれたら、よい学びになるのかなと思っています。16山口先生和田先生山口先生山口先生和田先生和田先生山口先生創作領域の例音楽科で学べること生徒に考えさせる授業展開歌唱領域の例生徒のリアクションをフックにした授業展開東京音楽大学教授 和わ田だ 崇たかし東京都江戸川区立清新第二中学校教諭 山やま口ぐち 桃もも介すけ音楽
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